読書を通じて研究生活を楽しもう

 

こんにちは。センケイです。

 

最初に自己紹介をすると

私は厳密なアカデミアではなく

企業研究者なのです。

が、

前よりもまた仕事が研究に近くなり、

研究はこういう意識でやると

効率上がりそうだなあ、といった諸々が

再び頭をよぎるようになりました。

 

このため、

改めてこうしたことを書こうと思います。

 

最初はウケを狙って、

後悔しない大学院の過ごし方!的な

気取ったタイトルも考えていました。

実際、

大学院時代にあまり効率出来なかった、

その後悔も、記事を書く大きな動機のうちの

1つではあります。

 

しかし、

そうした外発的欲求が前に出ると

自分の場合あまり楽しんで書けなくなる、

ということが分かっています。

 

なのでこのようなタイトルとし、

思うがままに好きなことを書こうと思います。

 

私が書くというのも僭越に感じていますが、

なんとなくの暗黙の了解を

明文化していることについて、

もしお楽しみいただけたら幸いです。

 

 

集団の中でうまくやっていく

さて、この春からいよいよ

新しい場所で

新しい研究生活が始まるとしましょう。

 

このとき、

「よし研究に専念するぞ」と意気込むあまり、

飲み会を断り続けてしまうのは

必ずしも得策ではありません。

 

このことがよく分かるのが、

『文化と状況的学習』です。

文化と状況的学習-実践、言語、人工物へのアクセスのデザイン

文化と状況的学習-実践、言語、人工物へのアクセスのデザイン

 

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研究室や会社の中で

どのような位置にいるかによって、

情報や器具へのアクセス権限

変わってきます。

 

研究室の中で馴染めていなければ、

みんなで順番に使うような人気の器具で

自分の番が回ってきにくいかもしれません。

 

あるいは、使い方が難しい器具について、

教えてもらいにくくなるかもしれません。

 

逆に一定の信頼を得ていれば、

組織の機密に近いような情報でも

扱いを任せてもらえるかもしれません。

 

知られているように、

器具や情報は、研究の命です。

 

その命をつなぐためには、

やはり真摯であろうとしたり、

良い関係を築こうとしたりすることが、

意味を持ってくるのです。

 

ちょっとドライな見立てになりましたが、

改めて言うなら、

研究を進捗させるには

そういうバランスや情緒もまた

大事ということですね。

 

 

人付き合いに関しては、

『信頼の構造』もまた

大いに役に立つように思います。

信頼の構造: こころと社会の進化ゲーム

信頼の構造: こころと社会の進化ゲーム

 

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当書は、

何となく理解されている「信頼」について

その奥深さを丹念に書いていますが、

かなり大まかに実践的な側面を整理すれば、

下記のことが言えると思います。

 

初対面では相手に親切にするのが良い。

・自分によくしてくれる相手にはより親切に。

・一方的に搾取してくる相手には冷たく

 

このような振る舞いをお互いにしていけば、

互恵的で有意義な関係を

築けやすいというわけですね。

 

さらに言えば、

因果とは限らず、少なくとも相関ですが、

以上のような振る舞いをする人は、

人から信頼されやすくもあるようです。

 

加えて言えば、

(こちらが次にどうするか決めるために、)

相手が自分とどういう付き合いをしたいのか

見極めるスキルが大事だ、

とも言えるでしょう。

 

 

以上で述べてきたようなことは、

ふつう、

暗黙の了解になっているとは思います。

 

しかし、ふと自分を振り返るとき、

こうした知見を活用することで、

より、継続的で良い関係について

努力ができるのではないかと感じています。

 

嬉しいことに、

こうした知見それ自体もまた

研究テーマになっているのです。

 

研究とは何か?研究のどこが面白いか。

こうした興味に滑らかに繋がることも

こうした著書の魅力と言えるでしょう。

 

この流れを受けて、次は、

研究とは何かについて

書いていきたいと思います。

 

 

研究という営みを振り返る

 

出来る人は出来てしまうと思うのですが、

少なくとも自分の場合、

研究のさなか今自分が何をしているのか

その振り返りに苦労することがあります。

 

しかし、少なくとも私のような

勉強が好きで研究を選んだ人間にとっては、

ありがたい書籍がいくつかあります。

 

上述の『文化と状況的学習』も

そのうちの1つでしょう。

 

研究する組織の中で、

人はどのように学んでいく/いけるのか。

 

研究する組織の中で、

人や人工物はどのようなネットワークを

構築しているのか。

 

これらはそれ自体興味深い対象ですが、

それに加えて、

自分の良い振り返りにもなるなあと

感じさせられました。

 

「研究するためのスキル」が何なのか

曖昧にしか分かっていなかった自分にとって、

少なくともそれを知るための手がかり

あるいは道筋が見えてきたように

思うのです。

 

研究のプロセスについて踏み込むと、

『科学とモデル』という本はなかなか

楽しく読むことが出来ます。

科学とモデル―シミュレーションの哲学 入門―

科学とモデル―シミュレーションの哲学 入門―

 

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主に自然科学全般について広く

述べていますが、

社会科学とも通じるでしょう。

またその議論の方向性としては

人文科学とも深く関わります。

 

実験であれ数値計算であれ調査であれ、

私たちは粗視化した何かを通すことで、

興味のある現象を考えることが多いです。

 

その粗視化のプロセスが

どのような構造なのか。

これを改めて振り返ることは面白く、

また、自分の営みを構造化する意味で

有意義なようにも感じます。

 

 

アブダクション―仮説と発見の論理

アブダクション―仮説と発見の論理

 

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論文には書かれない暗黙の内容として、

ある仮説をひらめくためには

演繹とも帰納とも異なる

また別の推論がよく使われるというのです。

 

そのようにメタに研究を振り返るとき、

このアブダクションを知ることは

悪くないように思います。

 

原因を説明するという意味では

個人的にはベイズとも近く感じましたが、

ともあれ面白いです。

 

 

趣味に熱を上げる

 

さて、ここまで、

研究を円滑にするための人間関係や、

研究とは何かという振り返り、

これらのこともまたそれ自体で

研究テーマとして面白いということを

つらつらと述べてきました。

 

ようするに研究の対象というのは

幅広いのです。

 

ということはひょっとして

趣味もまた研究テーマとして

読み込めるのではないか。

 

この発想にもっと早く至らなかったことも

いま大いに後悔していますね。

 

マンガやアニメ、ゲームなども、

気晴らしと思ってやる分には

「こんなことをやっていいのだろうか?」と

過度に疑念をもってしまい、

なかなか楽しめなかったりするものです。

 

どうせやるならそれらの趣味もまた

研究を含めた自分の全体感の中で

意味を持つものとして

位置付けたいですね。

 

たとえば趣味一般の意義については

社会学や心理学の書籍で

多数の良さそうな本が見つかります。

 

より特定の分野については、

最近ではアニメ研究やゲーム研究でも

大分書籍が増えてきているようです。

 

アニメ研究についていえば

 そのままズバリ「アニメ研究」と冠した

書籍があります。

アニメ研究入門【応用編】: アニメを究める11のコツ

アニメ研究入門【応用編】: アニメを究める11のコツ

 

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ゲームについていえば、

『ハーフリアル』や『ビデオゲームの美学』は

やはりバイブルではないかと思います。

ハーフリアル ―虚実のあいだのビデオゲーム

ハーフリアル ―虚実のあいだのビデオゲーム

 

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ビデオゲームの美学

ビデオゲームの美学

 

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アニメやゲームは、

前述した『科学とモデル』のような

架空のものと現実との位置関係について

引き継いでいる側面も見られます。

 

それに、まだ実現していない可能性について

先取り的にヒントをくれるようにも

思います。

 

へたに罪悪感を感じて休憩にならないよりは、

仕事や研究に役立つぞと思いながら

やるくらいでよいのではないかと

度々思うのです。

 

いっぽうで上記のような書籍を読むことで、

趣味を通じて楽しみながら、

論文を読むお作法を体得できるであろう点が

これまたありがたいです。

 

 

その他に個人的に思い出深いのは

『視覚文化「超」講義』ですね。

視覚文化「超」講義

視覚文化「超」講義

 

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この本を通じて、

こうした趣味の分野が研究対象としても

魅力を持っていると知れたし、

それに周辺分野の良さそうな書籍も

色々と見つけられたのです。

 

後述する『システムの科学』を知ったのも

この本の参考文献リストのお陰でした。

 

 

夢を持つ

 

さて、最後に、

研究を通じて何を楽しむかについて

個人的なモットーを書き、

当記事を締めくくりたいと思います。

 

さて、研究という活動は、

世界を知る活動だと言えるでしょう。

 

いま現在 自分がやっている活動がいかに

全研究の中で末端だとしても、

世界のあらゆることを知ろうとする試みの

その一端ではないか。

そのように思うのです。

 

そうであるならば、

その「あらゆること」のうち、

自分はどの位置にいるのかということを

今一度振り返るということは

無駄ではないと思うのです。

 

読む人によって評価が分かれていますが、

『システムの科学』は

夢を感じる本でした。

システムの科学

システムの科学

  • 作者: ハーバート・A.サイモン,稲葉元吉,吉原英樹
  • 出版社/メーカー: パーソナルメディア
  • 発売日: 1999/06/12
  • メディア: 単行本
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人間の行動の複雑さは

どのように理解できるのか。

 

この本が記すように、

その複雑さの多くが外部環境の複雑さに

依存しているというのであれば、

より汎用的な人工知能を作ることもまた

この考え方をもとに可能になるのではないかと

随分と情熱を掻き立てられました。

 

もちろん、人工知能に限らず、

地球や宇宙で生じているもろもろの現象、

それらについても同様に、

うまくその複雑さの由来を分離していけば

「複雑なものを複雑なまま」理解できるのではと

好奇心を掻き立てられます。

 

もちろん、これまで多くの総合的な取り組みが

頓挫しているのを見ると、

(例えば、サイバネティクスを題した本は、

 今割と下火なように見えます。)

まだまだ驚くほど多くの壁が

残っていることでしょう。

 

しかし少なくとも、

やがてはより多くのことが統合されて

理解できるのではないかと

希望を抱くことで、

自分の研究もまた奮い立たされる、

というわけです。

 

むしろ、壁が多くあるからこそ、

まだまだ一杯研究できる。

そのようにやりがいを

感じさせられないでしょうか?

 

そういう意味では私は、

下記のようなオートポイエーシスの本が

大好きなのです。

オートポイエーシス―第三世代システム

オートポイエーシス―第三世代システム

 

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自然科学の範疇では

どうしても定式化できない複雑な事態がある。

それがこのように人文科学によって

引き受けられている。

 

このことは、

自然科学、人文科学、社会科学

それらを横断的に見ていくことで初めて

理解できる体系が有るのだ、と

そういう希望を感じさせてくれるように

思います。

 

いくらでも耐えることのない

面白い対象がある。

それらのどれを取っても、

大きな統一的な構造を理解するために

役立つかもしれない。

 

これはなかなか私たちにとって

有難いことではないでしょうか?

 

さて、そのようなわけで、

私たちが車輪や文字を生み出した頃から

現在に至るまで進歩を続けている、

人文、社会、自然科学の系譜に

新たな一石を加えることを

是非楽しんでいきましょう。

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出典:Sid Meier's Civilization® V/ Firaxis Games

 

それではここまで、ありがとうございました。

 

また研究機関かどこかで

お会いしましょう。