自然科学を堪能できるゲーム

こんにちは。

先日のアドベントカレンダー

数学とゲームの接点について

意外と反応をいただいていたので、

 

 

その延長で、自然科学全般をゲームで体感?

できるかについて考えていきたいと思います。

 

社会科学については

以前のこの記事が近しいかと思うために

一旦見送ります。

 

a16777216.hatenablog.com

 

 

さて、 まずは有名どころから。

直近の典型例と物理シミュレーション

 

どうも自分は流行りをスルーする癖があって

未プレイである点が今悔やまれますが、

これ。 

store.steampowered.com

 

 

宇宙船の物理シミュレーションだけでなく、

試行と失敗を繰り返して

目的へと到達していくらしい

このゲームは、

そのプロセスまでも含めて、

自然科学的と言えるでしょう。

 

下記のような橋の建造ゲームもあるようで、

こちらもよく目にしますね。

store.steampowered.com

 

さて、ようやく1つめの

既プレイゲームです。

store.steampowered.com

 

競って素早く要塞を作り、

兵器をバシバシ打ち合うこのゲームは

まさに「男の子ってこういうのが

好きなんでしょ?」と言わんばかりですが

 

デフォルメされた司令官たちは愛らしいし、

それに↑のようなプロトタイプ論はまあ

言葉遊びにとどめておくとして、

ともあれ性別を問わず

楽しい時間を提供してくれるゲームと言えるでしょう。

 

f:id:a16777216:20171213222814p:plain

 

魔法陣グルグルにおける

 アラハビカ防衛戦なんかでは、

 あっこういうのに混ざりたい・・・と

 思わされたものですが、

 そういうワイワイに混ざれるかはさておき

 防衛設備の建設と砲撃とを合わせ持つ展開には

 (これに物語ができ、介入できるなら尚更)

 心踊らされるものがあります。

 

そしてなんとこれら3ゲームとも

日本語対応!

 

このように言うと

意外に感じられるかもしれませんが、

 

Steam でゲームを探していると、

比較的よく耳にするゲームであっても、

英語版しか手に入らないことのほうが

多いように思います。

 

 

さて、少しマイナーなところまで

掘り下げてきました。

 

物理というのは、その法則が比較的明確なためか、

(単に動きの再現に用いられるだけでなく)

ゲームのルールの中核に来ている場合が

比較的多くありますね。

 

スマホ・無料で比較的手をつけやすいものには

こんなものもありますし。

gigazine.net

従来のテトリスでは基本的には連鎖というものが

ありませんでしたが、

こちらは難しい反面一度連鎖が生じ始めると

それなりに続くことが多く、

なかなか爽快です。

 

宇宙との組合わせではこんなものも。

store.steampowered.com

 

円軌道を描くには地面に対して水平に

速度を持っていなければならない、

なんてことも直感的には忘れてしまっていました。

それを感じさせてくれるのも

宇宙の舞台ならではと言えますね。

 

 

さて一方、サンドボックスがらみにおいては

物理シミュレーションのゲームが

かなりの数あるようで、

まだプレイできているものも少ないですので

物理についてはぼちぼち終わりにしようと思いますが、

 

最後に1つ。

ここまで挙げたのは現実の物理法則

モデルになっているものでした。

 

DiGRA の 2015 年の大会で、

尾田欣也先生という方の講演で

印象に残っている言葉があり、

それは

フィクションにはフィクションの物理法則がある、

という内容のものだったと記憶しています。

digrajapan.org

 

架空の法則であっても、

その法則の中で閉じ、

一貫性と整合性が担保されていれば

(現実とはパラメーターの異なる)

物理法則として意味を持ちうるわけなんですね。

 

そのような法則とともにゲームを考えることには

大変な魅力を感じます。

 

 

ところで思い出してみれば、

特有の物理法則を持っている直近の例も

存在しますね。

www.jp.playstation.com

 

このシリーズでは、

主人公キトゥンとその周辺の重力を、

好きな方向へ変更することができます。

 

1のほうはプレイしましたが、

決して設定の奇抜さにとどまりません。

 

広大で(2ではさらにその2.5倍とも!)、

重力が操れることともマッチするマップ構成や、

アメコミ風のストーリー進行など、

それぞれの要素が調和しており

ゲームとしての完成度も感じました。

 

自然の/とのインタラクション

 

さて、では、

生命や化学、地学などの自然科学を

堪能できるゲームはあるでしょうか。

 

古典的な名作としてシムアースやシムアントは

言わんやですが、

 

閲覧注意(蟻の絵がリアルのため)の

下記のようなゲームが発売されていることが

目に留まります。

Empires of the Undergrowth on Steam

 

あるいは、生態系のコントロールという

意味ではこちら。

 

store.steampowered.com

 

ここでは、「成る」「生じる」「自生する」

という意味での自然に当たるのは、

むしろ人間のほうですが笑。

 

(このような「自然」の定義は、木田元さんの

 反哲学史精神の哲学・肉体の哲学より。)

 

生命、資源、あるいは人間が

ときには自発的に生み出されて相互作用し、

その多寡のバランスが影響し続ける点は、

 

(生態系の本質的な部分が、ゲームを

 面白くするためのルールに組み込まれていると

 言えそうですし、)

 

シムアースの良さを継承したゲームとも

言えるのではないでしょうか。

 

(ところで、

 自然に繁殖するものを管理するという視点でいくと、

 実は鉄道ゲームや街づくりゲーム、会社経営ゲームこそが

 生命シミュレーションに近しいかもしれませんね。)

 

さて、広くライフゲーム的なゲームについても

議論の余地が大いにありますが、

過去にも多少述べましたし、

ここでは深入りしないことにします。

 

 

さて、ゲームからは少し脱線しますが、

生命の定義については下記の1話が

示唆を与えてくれます。

anicobin.ldblog.jp

 

2017年秋放送中のこのアニメ、

どの話数においても内容が示唆的ですが、

 

この9話では特に生命の定義について、

ほとんど誰でも直感的にわかるように

豊かな映像とともに説明してくれます。

 

そして、

「生命とはなにか?」という問いへの

回答を考えるという遊びへと、

初心者から上級者まで誰でも楽しめるように

いざなっています。

 

自身を維持するものを生命とするのであれば

都市もまた生命。

 

ゲームの話題に戻りましょう。

 

上のようなことを考えてみると、

ゲームというのは、人工物の中でも比較的

人工生命の先端にあるように

思えてきます。

 

予想だにしない動きを自発的にすることに、

商売というモチベーションがある。

このため人間はその開発と研究に力を注ぐ。

そしてプレイヤーの行動という教師・情報源が、

サーバーの稼働中に常に与えられます。

 

一方で、人間から学習しないほうが

 強い AI プレイヤーになったという

 悲しい事例も聞きますが・・・

 より情報が抽象的であったり、

 あるいはランダム性を含んでいたり、

 情報の一部が非公開であったりする環境では

 機械のオリジナリティに人間がいい影響を

 与えられるかどうか。

 今後の研究や制作の動向が気になるところです。

 

これを一段階大きく括って、

遊びと知性の関係を考えることもまた

非常に興味深いところですが

ホモ・ルーデンスという言葉もありますし)、

これはまた別の機会に。

 

今後も、自然、あるいは生態系のメカニズムを

取り込んだようなゲームの出現があるか

引き続き着目していきたいと思います。

 

作者やプレイヤーの意図を超えて

結果やバランスが自然に生じるというのは

構造としてきれいだし、

適用・応用への期待がたかまりますね。

 

今や鉄板、情報系とゲーム

ここ最近、

ゲームでプログラミングが学べるという話を

よく聞くようになりました。

 

しかしこうした学習目的だけでなく、

ゲームとしての面白さを重視したであろうもので

プログラミングに近しいものが

多いこと、多いこと。

 

Steamではド直球で、

「プログラミング」というタグがあるほどです。

 

これを書いている今、タグのリンクが

なぜかうまく機能していないので、

代わりに検索結果のリンクを張ります。

http://store.steampowered.com/search/?term=%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0

 

プログラミングの面白さ自体が、

ゲームに近しいところがあるのでしょうか。

 

これは以前、『ハーフリアル』における

ゲームの定義を、

私が分かりやすく感じる言葉で書いたものですが、

 

1. ルールを持つ。

2. 結果が明確で、かつ結果を変えられる。

3. それぞれの結果に、良い・悪いなどの意味が与えられている。

4. 努力が影響を及ぼす。

5. 人が結果をまじめに受け止める。

6. 現実に与える影響を、自由に着け外しできる。

 

この6つのうち、6.以外の5つが

プログラミングにも共通していそうですね。

 

ゲームというのはそもそもプログラムなので

構造上近いのはある意味当然かもしれませんが。

 

その改題解決のプロセス自体にも

共通の面白さがあるかどうかは非自明ですし

発見があります。

 

パズルに特化した面白さの考察については

 『パズル本能』という本がありますが、

まだ読めていないので、

ともあれそうした関連性の指摘がある点だけ

挙げておきます。

 

まとめ

ゲームによって自然科学が学べるような

ものだけでなく(もちろんそれも重要ですが)、

 

ゲームとしての面白さを追求するために、

自然科学の特長がうまく活用されているものが、

多数あるのを見てきました。

 

典型的には物理や情報、

そしてときには生物(学)の知見・性質が

面白い・好ましいルールの実現に役立つのは

嬉しいとともに興味深いことです。

 

しかし必然のようなところもあります。

 生態系等の場合、

 現に持続可能性を実現しているモノゴトに

 横たわる法則であるからこそ、

 それをゲームに適用したとき、

 あっさり決着がつくようなアレなゲームでなく、

 最後まで誰が勝つか分からないような

 白熱したゲームにできるポテンシャルがあると、

 そう言えるわけなんですね。

 いい法則というのは自然界にたくさん落ちているので、

 使える材用としては申し分ないのかな、

 という側面がありそうです。

 

これにはいろいろな有意義さがあって、

第一に、

長い歴史の中で人間が見出してきた知見が

科学や、実用性(つまり技術?)だけでなく

遊び(つまり文化?)に用いれるのは、

一度で二度おいしいことだし、

創作の地平線と多様性を推し進めるうえでも

十分なリターンがあります。

 

第二に、

学習目的というよりは

純粋に楽しむために手を付けたゲームから、

自然科学を直感できるチャンスがある、

ということです。

 

さらに考えうる良さとしては、

「ゲームの空間内の自然科学」というのが

研究になる余地が垣間見える点ですね。

 

ゲームにおいて(ゲームを楽しくするために)

独自に定義される、

現実と異なる自然法則が、

もし非自明な現象を生み起こしたら

どうなるか。

 

研究に役立つとしら勿論嬉しいし、

個人的には、

そうしたことの生じる可能性自体に

大きなワクワクを感じてしまします。

 

ゲームの中でやはり(楽しさという)必要に

かられて AI 研究も進んでいると

見受けられますから、

こちらについても期待が膨らむところです。

 

長くなりましたが、

そのような期待と伏線を残しつつ、

今回はここまで。

ありがとうございました。

 

参考文献

※労力対効果を鑑みて、この埋め込み形式を試してみます。

反哲学史 (講談社学術文庫)

反哲学史 (講談社学術文庫)

 

 出版社ページ:『反哲学史』(木田 元):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部

 

精神の哲学・肉体の哲学  形而上学的思考から自然的思考へ

精神の哲学・肉体の哲学 形而上学的思考から自然的思考へ

 

 出版社ページ:『精神の哲学・肉体の哲学 形而上学的思考から自然的思考へ』(木田 元,計見 一雄)|講談社BOOK倶楽部

 

ハーフリアル ―虚実のあいだのビデオゲーム

ハーフリアル ―虚実のあいだのビデオゲーム

 

 出版社ページ:half-real - New Games Order, LLC.