読書を通じてサンシャイン!! を楽しもう #04 システム論編 虹のオートポイエーシス

 

こんにちは。センケイです。

 

ここまで主に社会学の観点から、

サンシャイン!! の面白さをもっと覗くために

色々なことを考えてきました。

 

しかし元々物理学を専攻してきた自分としては、

やはり数理科学的な観点もまた

盛り込まないわけには参りません。

 

ここで、

広い意味で自分の研究テーマでもあったし、

なおかつ Aqours を理解するうえで

よく機能するであろう概念として

「システム論」というものがあります。

 

 

ではなぜ、

これが Aqours の理解に役立つのでしょうか?

 

 

サッとヒトコトで言うのは難しいですし、

たんたんと概念を説明しても

つまらないものになるおそれもあるので、

まず自分の興味(≒夢)から

話し始めてみたいと思います。

 

 

複雑なものを理解する、システム論 

 

・・・この世のありとあらゆる複雑な現象

それらを何とかして理解していきたい。

 

 

私にはこの夢があります。

しかしこんなとき、一体どうすれば良いでしょう?

 

そのヒントを豊富にもたらしてくれるものこそが、

例えば、このシステム論というわけです。

 

 

そもそもなぜ現象、

特に自然や社会で見られる複雑な現象は、

1つの理論でうまく説明できないのでしょうか?

 

直感的にはまず、

多数の要素が絡み合っているためだ、と、

このようなアイデアが浮かびます。

 

このブロッコリーを見てください。

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筆者撮影。

 

自然界が産んだこの美しくも奇妙な造形は、

小枝の1つ1つが取れそうな複雑さを超え

多数の小枝が関係しあった「全体」によって

はじめて作られることができる。

 

全体は部分の和を超えている。

 

このように説明したい欲望に襲われませんか?

 

「何百もありそうな小枝の性質を

時間はかかるが1つ1つ丁寧に分析すれば、

いつか全体の構造を説明できるかもしれない・・・」、

これを打ち砕くかのようです。

 

1つ1つの要素の和では説明できなさそうな現象が

頑として顕現してきます。

 

実際、多数の要素が集まることで、

要素の和以上の複雑さが作られる現象は、

シミュレーションによって実演可能です。

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筆者によるシミュレーションと描画。

こにプログラムでは、「この形になれ」という

命令を与えているわけではありません。

 

ただランダムに周囲から飛んでくる粒子に、

「ほかの粒子にぶつかったらその場で止まれ」

と指示しているだけです。

 

個々の粒子の振る舞いがかなり単純なものでも、

全体としての挙動が単純とは限らないわけです。

 

 

ここで1つの希望を提供するのが、

システム論です。

 

コトバンク日本大百科全書(ニッポニカ)の

システム論の説明では、一部抜粋すると

構成要素間の相互依存関係を明示的に分析しようという新しい考え方が生まれた。この考え方がシステム論

とあります。

たくさんの要素1つ1つというより、

要素どうしの絡み合いをみることが

大事だというわけです。

 

実際、そのように相互作用を書くための

ツールキットが、システム論の中にある程度、

取り揃えられています。

 

要素を1つ1つ分析するのでは理解できない

「全体」を理解するために、

すくなくとも関係性に着目しようと

そういうわけですね。

 

 

しかしそれでももちろん、

この壮大な夢ははるか遠くに見えるものです。

 

先ほどは物理学を挙げましたが、

もちろんそれだけでは事足りず、

生物学や化学などの諸自然科学、

そして対応するさまざまな工学の力が結集され、

それでようやく少しずつ進んできたという

歴史を持つようです。

 

さらには、自然科学のカバー領域全体をしても

 事足りないという様子が垣間見られます。

 

社会科学や人文科学の中でも、

このシステム論が発展を見せています。

そうした分野の言葉を使って初めて、

新たに到達できる点が、

大幅に増えることでしょう。

 

 

・・・さて、ここでそろそろ、

Aqours との接点を1つ示してみましょう。

 

概念の詳しい説明はあとの章に回して、

具体例から見ていきましょう。

 

例えば、「結晶ができる」ということを

考えてみましょう。

 

このとき、「結晶ができる」という現象が

どういう「範囲」で起きているのか、

明確に言うことはできるでしょうか?

 

ビーカー、あるいは洞窟の岩の中?

それとも結晶の形状そのものが

「結晶ができる」ことの輪郭でしょうか?

 

このように、

複雑な現象において明らかにしにくいことの1つが、

その現象の範囲です。

 

 

オートポイエーシス―第三世代システム』は、

結晶が作られる現象について、94P で、

大胆にも以下のような説明を与えています。

結晶生成のプロセスを構成要素とするシステムは、[...] 作動そのものを構成要素とする。このとき結晶形成を行う生成プロセスの全範囲がシステムである。

ようするにモノや結果というよりも、

動きを見て範囲を定めようというわけです。

 

結晶は、何らかの、動くシステムによって

作られているものとしましょう。

 

そのシステムは、ビーカーといった容器の中、

あるいは大地の底のほうで、

様々な分子を巻き込んでいるはずです。

 

そのとき、

この「結晶ができる」システムを構成している要素は、

分子といった素材ではなく、

動作という要素だ。

ここではそのように理解されるのです。

 

そしてそのシステムの範囲というのは、

ビーカーや大地の底でもなければ、

できあがった結晶の形でもなく

結晶生成プロセス全体だというのです。

 

そのときそのとき新たに結晶ができつつある

そのフロンティアの部分・・・

それもその動作こそが、

瞬間瞬間の「結晶ができる」範囲だったと

そう言えるでしょう。

 

確かに、以下のような反論を思えば、

これも何となく納得できる気がします。

 

まず、ビーカーの底を範囲に選んでしまうと、

次の反論に応えられません。

ビーカーの底の全てが結晶で埋め尽くされるとは

かぎらないぞ、と。

 

それに、出来上がった結晶を範囲に選ぶのにも

次の問題があります。

結果の形からは、出来つつある最中

その瞬間瞬間の範囲がわからないのですから。

 

出来上がった結晶の形は、

後からシステムを振り返るうえでは

ヒントにはなるでしょう。

 

しかし時系列を追って、なおかつより正確に

システムの範囲&境界を理解するには、

その形成の過程で何が起きているかについて

迫らなければならないでしょう。

 

そこで、

動作のプロセス全体が現象の範囲を定める。という

理解の仕方が必要になるわけです。

 

オートポイエーシスの拡張』には

次のような例もあります。

 

円を描いて走る人がいるとしましょう。

このとき、円の内と外を決めるのは、

走る行為そのものに他ならないわけです。

 

ここで、Aqours の「輝き」を思い出してください。

 

Aqours の存続条件と言えるほど大事な輝くこと

彼女たちは、「輝くこと」とは何なのか、

長い間見出すことができず、

ときには戸惑いながら過ごしてきましたね。

 

しかし上の議論を参考にすれば、

輝き(の範囲)をなかなか明らかにできない理由も、

納得できそうです。

 

仲間たちと日々を全力で過ごし、

パフォーマンスや大切な時間を生み出すこと。

それが「輝くこと」であると

仮定しましょう。

 

そうした時間を生み出す動作そのもの

「輝くこと」であるからこそ、

9人になったことや、地区大会進出、

本大会優勝といった結果からでは、

「輝くこと」(の範囲)が

把握しづらいわけです。

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!2期13話/
©プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!

 

自己物語編でも振り返ってきましたが、

動作そのもの、すなわち

プロセスそのものに着目したときついに、

その「輝くこと」を見出すに至ります。

 

もちろん、高海千歌たちが

プロセスに着目するまでに時間を要したのは、

彼女たちのせいとはいえない事情があります。

 

前述の『オートポイエーシスの拡張』によれば、

動作や行為をする人本人は、

一般にその動作や行為を認識するのが難しい

ということになります。

 

行為は行為を生み出す連鎖の中にあり、

認知は認知を生み出す連鎖の中にあります。

少し大雑把に言えば、

行為と認知が別の循環を作っているがゆえに、

お互いもう一方を捉えるのが難しいのです。 

 

動作や行為というプロセスは、そもそも、

認知の中に入れにくいわけです。

 

さて、ここまでまずは、

システム論の理解の仕方をいくつか述べつつ、

システム論が Aqours の理解に役立つであろう

端的な例を示してきました。

 

システムは動作それ自体が範囲なのだから、

生成物をもとに範囲を決めることができません。

 

「輝くこと」もまさにこれにあたるでしょう。

 

また、最後に少し触れたように、

システムでもとりわけ「オートポイエーシス」は、

行為が行為を生む連鎖として理解できます。

 

これはスクールアイドルというシステムに

よく当てはまるでしょう。

このことについては後述します。

 

さて、このようなシステム論の道具、

自然科学的な道具や、

ときに人文・社会科学的な道具を

うまく組み合わせながら、

Aqours の過ごしてきている時間について

迫ってみましょう。

 

 

輝きの数理モデル 

 

改めてストーリーを見返していくと、

高海千歌という人物は、

自身やみんなの小さなやる気を見落とさず、

それを大きくするという重要な役割を

担っているように見えます。

 

この意義を体系的に理解するために、

制御工学や生命科学においてみられる

ポジティブフィードバックという言葉が

役立ちそうに思います。

 

ポジティブフィードバックは、

例えば少しでもプラスに傾いたものを

大きなプラスに拡大させる効果を持ちます。

 

数式で書くとすると、典型的には、

 \frac{dv}{dt} = v

という数式で表されたり、

あるいは無限大にならない抑制を加えて

 \frac{dv}{dt} = v(1 - v)

と表されるでしょう。

 

システムバイオロジー』によれば、

ポジティブフィードバックの効果は、

ある閾値を超えたことを検出したり、

一瞬だけの刺激を持続する信号に

定着させたりといった形で現れます。

 

千歌に戻ると、

以下のような例が思い当たります。

 

1期4話においては、

国木田花丸黒澤ルビィに芽生え始めた

スクールアイドルに憧れる気持ちを、

活動開始できるほどの大きさへ

(間接的に?)発展させました。

 

これは閾値を超えたことの検出に

相当しそうです。

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!1期4話/
©プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!

 

一方、2期2話では、

小原鞠莉が努力の末に獲得した条件、

100人集めれば廃校を取り下げるという

交換条件をうけて、

「10から100へ!」と高らかに宣言します。

 

持続できる動機に定着させる様子が

伺われます。

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!2期2話/
©プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!

このように Aqours において千歌は、

かなりおおざっぱに言うならば、

ポジティブフィードバックの役目を

たびたび果たしているといえるでしょう。

 

 

さて一方で、桜内梨子の役割についても

注目してみましょう。

 

特に上で挙げた1期4話においては、

梨子は渡辺曜とともに、

前のめりになっている千歌に対して

現実的な解を示しつつ、少しなだめます

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!1期4話/
©プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!

何も言わずただガッツポーズをとる曜の姿、良いですね…。

 

この梨子たちによるなだめを、

ネガティブフィードバックと呼びましょう。

 

ネガティブというのはもちろん、

悪いことを意味するわけではありません。

 

正、負のどちらかに傾きすぎたものを、

逆側に引き戻す効果を持ちます。

 

そう、負を正に戻す効果も含みます。

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!2期1話/
©プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!

学校説明会中止の知らせを受け、

沈む千歌を引き戻す力を与えたのは、

誰をおいてもまず梨子でした。

 

劇場版でもこの流れを汲むシーンがあったことも

記憶に新しいですね。

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow
©2019 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!ムービー
来場者プレゼントの本編フィルムより。撮影は筆者。

 

数式で書くとすれば、典型的には、

 \displaystyle \frac{dx}{dt} = v

 \displaystyle \frac{dv}{dt} = -2 \zeta v -x

という連立微分方程式によって

与えられるでしょう。

 

これは(減衰)調和振動子

いわゆるバネのモデルに相当します。

 

行き過ぎたバネは、

反対側に引き戻す力を得るのです。

 

ではこのネガティブフィードバックは、

どういう効果を持つのか。

 

同『システムバイオロジー』によると、

強すぎる刺激を抑える効果や、 

特定の振動数&周期だけを強めるような

効果を持ちます。

 

梨子に戻ると、

2期1話においては強すぎる落胆を抑え、

千歌およびチーム全体が折れてしまうのを

防ぐ役割をしたと言えるでしょう。

 

1期4話、すなわち、あまりに一喜一憂すると

チームの雰囲気が高速で振動してしまう、

つまりブレてしまう場面。

ここでは振動数を抑え、ブレを防ぐ役目をしたと

解釈することができるでしょう。

 

さて、

同『システムバイオロジー』が面白いのは、

ポジティブフィードバックと

ネガティブフィードバックの

両者が組み合わさった場合に何が起こるか

詳しく解きほぐしている点です。

 

結論から言えば、

Van der Pol 方程式が作り出すような、

安定した振動が実現されます*1

 

 \displaystyle \frac{dx}{dt} = v

 \displaystyle \frac{dv}{dt} = \mu (1-x^2) v -x

 

小さくなりすぎた振動は大きな振動に。

大きくなりすぎた振動は小さな振動に。

 

外部のいかなる刺激にさらされようと、

振幅と周期とが一定で安定した

浮き沈みが繰り返されるのです。

 

千歌と梨子(あるいは前述のように、曜も*2)が

手を取り合うとき、

アクセルとブレーキを交互に繰り返す

絶え間のないスクールアイドル活動が

持続される。

このようなことが、

以上の数理モデルから理解されます。

 

もちろん、こうしたモデル化

ものごとのうちの一側面を捉えるにすぎません。

 

千歌や梨子たちの活躍を

この数式だけですべて説明できると主張するのは

もちろん問題があると言えるでしょう。

 

しかし逆に言えばモデルは、

着目するある現象のうち何が本質か

その見極めに有効だと言えます*3

 

ここで言うならば、

Aqours が浮き沈みしながらも

安定して活動を継続する理由は、

最低限、このような千歌と梨子たちの

Aqours 内の役割によって保証される。

このような理解が得られるでしょう。

 

言い換えると、

Aqours の安定した駆動力が他にも

多数あるにせよ、

潜在的に安定して駆動を続けるということが

予め示唆されるというわけです。

 

繰り返しますがこれはあくまでモデルであり、

着目するある1つだけの現象について、

説明可能な方法の1つを与えるだけです。

 

微分方程式だけで彼女たちの行動が

かなり分かってしまうのだという主張では

全くありません。

 

しかしそれでも、

物事を切り取る視点として

それなりに強力な方法であるということも

確かめられたのではないでしょうか。

 

 

さて、こうした自然科学の伝統的な方法に加え、

人文科学や社会科学の知見を持ち込むとき、

もっと Aqours を楽しむことが

できるようになるのか。

 

もちろんそれによって「すべて」を

抽出できるようにはならないにせよ、

限界を拡張できるには

違いないでしょう。

 

システム論の中でも

なかなか自然科学が手出しできていない概念、

オートポイエーシス」を導入することで、

スクールアイドルという現象について

理解を試みていきましょう。

 

言葉で捉え直す、羽根のオートポイエーシス

 

オートポイエーシスという言葉は、

システム論を扱う本でさえ(特に数理系の本では)

必ずしも大きく取り扱っていません。

 

上で挙げてきたような河本さんの人文科学の書籍、

あるいはルーマンを扱う社会科学の書籍で

ようやくいくらか見かけることができます。

 

それでも、日ごろ出会う概念とは遠いもので

なかなか理解が難しく感じます。

 

ただ、こうした書籍が口をそろえて言っていることを

素朴に反復するならば、

オートポイエーシスは以下の性質を持つものだ、と

主張することができるでしょう。

 

自分で自分のパーツを作り出し続ける。

 

例として少しわかりやすいのは、

オートポイエーシス―第三世代システム』の、

自動車との違いです。

 

自動車はオートポイエーシスではない

とされます。

 

なぜなら、自動車は壊れたときに、

自分自身で自分のパーツを作って修理し、

それで動作を継続する、ということは

とうていできないからです。

 

もう少し踏み込んでみましょう。

 

新泉社さんの『ルーマン 社会システム理論』は

「社会システム」の例を挙げます。

 

この本の 93 P によると、社会システムは、

コミュニケーションからコミュニケーションを継続的に生産する。

とされています*4

 

パーツをもとに、

同種のパーツを(継続的に)作り出す、

オートポイエーシスにはそのような傾向があると

このようにも言えそうです。

 

それでは、

私たちのターゲットであるサンシャイン!! に、

早速当てはめてみましょう。

 

スクールアイドル・システムを考えたとき、

継続的に生産されているものは何か。

 

1つには、それは羽根だと思います。

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!1期12話/
©プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!

μ's の活動が生産したとおぼしき羽根は、

1期12話において Aqours に引き渡されます。

 

羽根を受け取った Aqours はその活動を通じて

2期12話で羽根を溢れ出させ、

新たなスクールアイドル活動に繋がることを

予感させます。

 

劇場版において Saint Snow から

Aqours に羽根が渡されたことも

記憶に新しいですね。

 

社会システムが

コミュニケーションからコミュニケーションを

生産し続けるがごとく、

スクールアイドル・システムは

羽根から羽根を生産し続けるものと

このような理解が得られそうです。

 

もっとも、羽根だけがスクールアイドルの

構成要素と考えるのは

不十分という感が否めないため、

さらなる吟味が必要だと言えるでしょう。

 

 

さて、

次の章では少し解像度を高めて、

スクールアイドル全体ではなく

Aqours をシステムとして

捉えてみましょう。

 

9人でも6人でも Aqours だ、に対して

一定の解釈も得られます。

 

 

私たちファンが作る虹のオートポイエーシス

 

まずは、議論を進めやすくするために、

以下のように仮置きしてみましょう。

 

Aqours システム」が継続的に生産するものは、

輝くこと」である。と。

 

そしてこれは作中の Aqours に限らず、

この実世界Aqours にも当てはまり、

それは私たちファンをも含んでいる

このように解釈したいと思います。

 

この解釈によって、

9人でも Aqours だし6人でも Aqours

さらには私たちファンが 10! と言える意味も

浮き彫りになってくると考えています。

 

1期13話においてむつが

「学校を救ったり、キラキラしたり輝きたいのは、千歌たちだけじゃない」

と代表して言うように、

応援する客席の皆も、

輝きたいメンバーに違いありません。

 

そして現実世界の私たちが、

実際に「Aqours システム」に参加して

輝くことの産出ができていくのか。

 

これについて吟味してみましょう。

 

まずは時は遡ること2018年7月、

ロサンゼルスでの出来事です。

 

 

海を越えたその現場でも

多くのファンのかたがいることに

思わず嬉さが止まらなくなります。

 

しかしそれ以上に驚くべきことは、

ここでなんと、が成功している点です。

 

人数が多いほど虹の実現が難しいことは、

直感的にも明らかと言えるでしょう。

 

それをこの 7,100 人もの会場で実現して

しまっているのです。

 

このように、

ファンも一体となって演目を彩るとき、

ファンもまた Aqours システムの一員となり、

そのことが輝くことを産出したと言って、

差し支えないでしょう。

 

Aqours というシステムの輪郭は、

9人のキャストのかたがたの輪郭に

ピッタリと一致するでしょうか?

 

 

上で見るように、

そうではない、と考えるのが妥当ですね。

 

キャストのかたの間と間、

あるいはステージの装飾や照明、

そのとき「輝き」と呼べるものを生み出すのが

Aqours というシステムだと捉えるのが

自然ではないでしょうか。

 

そしてその嬉しくも長時間に渡るステージの中、

9人だけがクローズアップされれば

1期13話末のように「この9人」となるのであり、

6人がクローズアップされる瞬間に

この6人となると言えるでしょう。

 

そしてそこにファンによる演目の彩りが加わるとき、

Aqours のメンバーは・・・

10人という名の 7,100 人になることが

可能だと考えられます。

 

もちろん状況に応じて

11人になるとも言えるでしょう。

 

 

さて、いまいちど

時間軸での捉え方に戻りましょう。

 

Aqours システム」は、

輝きをもとに新たな輝きを産出します。

そのように駆動し続けることこそが

すなわちシステムなのです。

 

このように捉えていくと、

このソウルにおける虹が

一層意味を持って感じられます。

 

ときは2019年4月、ソウルにおいて、

虹が見事実現したのです。

ロサンゼルスにしても、

ソウルにしても、

ここまで大きな虹を作ることは

並大抵ではなかったと思います。

 

それでも呼びかけはこだまし、

そして一度できた虹は、

想いをつなげていくことにも

成功したのです。 

 

8,057 人ものファンのかたがたがいて、

そしてまた虹を成功させたことに、

ことばにならない嬉しさがあります。

 

そして、

このように洋を超えて続いてきた

「輝くこと」のタスキは、

本邦へも無事着陸する形になります。

 

2018年11月、ロサンゼルスの少し後、

@AqoursStand という企画のかたがたが

かなりの努力をされていたようです。

 

しかしアクターが多ければ多いほど、

選択可能な色の組み合わせは複雑で、

その情報エントロピー*5の期待値を考えると

実現は難しいのヒトコトに尽きるでしょう。

 

しかし海を越えて絶えず作動してきた

輝くことのオートポイエーシスは、

そんな私たちファンに

再びチャンスを呼び込んでくれるのです。

 

所沢においてみごと実現されたこの虹。

 

約 40,000 人の心に深く残ったに

違いありません。

 

しかしこの虹という輝きの連鎖は、

ヒトという物理的存在について

着目するだけでは、

説明に困難を要するでしょう。

 

共通して参加されているかたが

いないではないにせよ、

公演ごとにファンの大多数は

異なっているだろうからです。

 

ですがこれまで見てきましたように、

ヒトを要素として考えるのではなく、

動作や行為を要素として考えれば、

虹の成り立ちは概ね明らかになります。

 

虹という輝きを構成要素として

また次の虹という輝き

継続して生み出し続ける

 

その範囲が場所に縛られず、

輝くという動作全体だからこそ、

海を越えて虹を生み出し続けられる。

 

これこそが「Aqours システム」という

オートポイエーシス」であると

考えることができるからです。

 

 

最後に

 

自然科学的な手法や、それを膨らませる意味での

人文・社会学的手法を使うことで、

なんとか Aqours の理解を深められないか。

 

ようやく記事にすることができました。

 

結果、

まずは数理科学的な観点から、

作中の Aqours潜在的

安定したアクセル・ブレーキの波

作っていけることを示唆しました。

 

また、取り扱いの難しい概念である

オートポイエーシスを使うことで、

作中の羽根

あるいは現実空間の虹について、

何故それ時間や海を越えて

渡っていく事ができたのか、

そしてその意味は何なのか、

ある程度の解釈を見出せました。

 

オートポイエーシスの概念は

理解が大変でしたが、

幾つかの書籍を見比べることで、

何とか形にできたと思います。

 

このため、

ラブライブ!のファンでないかたにも

理解の足掛かりとしてもし

ご活用いただけるようになったら・・・

たいへん嬉しく思います。

 

なお、オートポイエーシスを直接書いたものではありませんが、こちらの『身体とアフォーダンス』で、いろんな要素が代わる代わる参加することについて、大分直感が湧きました。

 

誤った記載をしていないか

万全を尽くしていますが、

おかしい記載がもしありましたら

ご指摘いただけると、

こちらもたいへん嬉しく思います。

 

 

作品や公演、出演されるかたがたを通じて

魅力的な場をみんなで作っていくこと。

 

これまでの人類の叡智をもってしても

なかなか理解できなかったことを少しでも

理解しようとすること。

 

やっていきたいですね。

 

それではここまで、

ありがとうございました。

 

また、

どこかのシステムでお会いしましょう。

 

参考文献

書籍・論文

オートポイエーシス―第三世代システム

オートポイエーシス―第三世代システム

 

出版社サイト 

 

オートポイエーシスの拡張

オートポイエーシスの拡張

 

 出版社サイト

 

システムバイオロジー (現代生物科学入門 第8巻)

システムバイオロジー (現代生物科学入門 第8巻)

 

出版社サイト 

 

常微分方程式 (技術者のための高等数学)

常微分方程式 (技術者のための高等数学)

 

 

 

科学とモデル―シミュレーションの哲学 入門―

科学とモデル―シミュレーションの哲学 入門―

 

出版社サイト

 

ルーマン 社会システム理論 [「知」の扉をひらく]

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  • 作者: ゲオルククニール,アルミンナセヒ,舘野受男,野崎和義,池田貞夫
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  • メディア: 単行本
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出版社サイト

 

情報理論の基礎―情報と学習の直観的理解のために (SGC Books)

情報理論の基礎―情報と学習の直観的理解のために (SGC Books)

 

出版社サイト

 

 

Néda, Z., Ravasz, E., Vicsek, T., Brechet, Y., & Barabási, A. L. (2000). Physics of the rhythmic applause. Physical Review E, 61(6), 6987.

arxiv.org

 

 

身体とアフォーダンス: ギブソン『生態学的知覚システム』から読み解く (新・身体とシステム)

身体とアフォーダンス: ギブソン『生態学的知覚システム』から読み解く (新・身体とシステム)

 

出版社サイト 

 

 

映像作品

www.lovelive-anime.jp

 

 

www.lovelive-anime.jp

 

 

Web サイト

kotobank.jp

 

 

web.archive.org

※ 元 Nokia Theatre がのちに

Microsoft Theatre になったようです。

 

www.eventernote.com

*1:微分方程式の教科書は多数ありますが、自分が特に参考にしたのは培風館の『常微分方程式 (技術者のための高等数学)』。

*2:はじめは曜と梨子とを2種類のネガティブフィードバック  - \mu x^2 v  -x とに分けて割り当てるという仮説も考えていましたが、これは難しそうで断念しました。例えば曜の場合にしても、2期7話では「大丈夫だよ」と言うことで加速を抑える抗力  - \mu x^2 v のような役目を、1期7話では「くやしくないの?」と言うことで反対側に引き戻す弾性力  -x のような役目をして見えます。

*3:こうした「モデル」の役割は、『科学とモデル』が詳しいです。

*4:なお、いずれの本にしても、オートポイエーシスは「閉じた系」であるとされます。理数系のシステム論の本ではよく「開放系であることが大事だ。」「開放系であることで(自由)エネルギーが入ってくるがゆえに、生命は動作を続けられるのだ。」などと書かれます。にもかかわらず、システムが閉じた系だ、と書かれているのを見ると、まっこうから矛盾しているように見え、混乱させられます。しかしこれは、そもそも捉えたい「対象」が違っているせいで起きていることだと考えられます。理数系のシステム論の本は1つの「細胞」や「機関」、あるいは「生物」を指して、「開放系」だと述べているように思えます。いっぽう、オートポイエーシスを扱ういくつかの本は、(継続的に動作をする)「現象」を指して「閉じた系」だと言っているように思えます。(現象というのは少し雑な言い方で、もう少し適切な表現があるかもしれません。あるいは「現象」の定義をもう少し厳密に行なうか。)「社会システム」というのは国家や企業といった比較的境界の明瞭なものではなく、恐らく、社会という現象そのものを指しているのでしょう。同じように、生命のオートポイエーシスは、生命活動という現象を指しているように思えます。そうすると、生物の肉体自体が境界になるのではく、生命活動に必要な要素、取り込む栄養や、その生命のために整えられた環境(極論すれば、家や巣もこれに含まれるかもしれません)が、動的にシステムに参加している、と解釈することも出来そうです。私が理解する限り、このような切り取り方の違い、あるいはその延長線上から、開放系か、閉じた系かが分かれているものと考えられます。

*5:ペンライトの数が多ければ多いほど、取りうるペンライトの色のパターンは雪だるま式に増えます。虹という秩序だったパターンを作るのは、その無数のパターンのうち、ほんの限られたパターンを実現することに相当します。一般に、その母数が増えれば増えるほど難しくなると理解できます。情報エントロピーについては SGC Books の『情報理論の基礎』が分かりやすかったのですが、あいにくこれは絶版。。新しい他のいい教科書がもしかしたら出ているかもしれません。また、相互作用のおかげで全体の色が秩序だっていくことについては、単に色が揃うという極端な議論に絞れば、イジングモデルが参考になるでしょう。例えば「Pythonで粒子のスピンを操ろう!: 磁石とはなんぞや?」といった技術記事。系、すなわち会場が大きいほど、ただ同じ色になるだけでも時間を要することが示唆されます。ただペンライトの光は遠くまで届く遠隔相互作用なので、もう少し前提を工夫して考える必要があります。なお、会場での秩序形成については、少し古い論文ですが例えば Néda (2000)  et al. といった研究があります。