ラブライブ!を研究するためにすべきことを整理する

問題提起:人類はラブライブ!を知っているか

 

こんにちは。センケイです。

 

今回はいつもより焦点を絞って、

ラブライブ!を研究ことに向けて

何をすべきかをひたすら書いていきます。

 

主に整理が目的ですが、

ラブライブ!を自ら研究したいかたや、

ラブライブ!がいかに研究されうるかに

ご興味あるかたにとって、

楽しい、あるいは役に立つものになれば

嬉しい限りです。

 

 

さて、日ごろから愛してやまない

ラブライブ!ですが・・・、

やはりファンを続けていると

公式から与えられるものだけではなく、

考察をはじめとする深みへと

歩みを進めたくなるものです。

 

このような考えに至ってみると、

ラブライブ!という作品が

国内外を問わずどう研究されているのか、

あるいはどんな研究の進展に

活用されているのか、

そうしたことが気になり始めます。

 

ラブライブ!がもし学術…つまり、

「世界が知っていること」へも

一定の貢献を果たしているとしたら、

ファンとして一層、

誇らしいではありませんか。

 

いや、この作品の深みというのが

アカデミックな活動で深堀りされてないなど、

むしろ考えにくいことです。

 

しかし・・・、

深い考察が載った書籍は幸い

いくつかあるものの、

論文として審査の通っているものである、

査読論文という学問の心臓部には

いまだわずかしか至っていないようです。

 

例えば、Google Scholar*1 において

「"love live" "school idol"」と検索することで

現状を見積もることができます。

 

さて、こうなってくるともの寂しいし、

由々しき事態です。

 

ここで、

困ることと意見したいことが

1つずつ出てきます。

 

困ることとしては、

ラブライブ!を知るために知識を探しても、

「世界が知っていること」のうち

一番確かなモノたちの中に、

それがないという点です。

 

できる限り確かなことを知りたい。

人から「それをどこで知ったの?」と

半ば疑い混じりで聞かれたときには、

「~の論文だよ」と言えるようにしたい。

 

この願いに応えるには、

世界はまだ道半ばというわけです。

 

続いて、意見したいことです。

いやいや、

これだけ多くの考察がされていて、

こと μ's に関しては

すでに書籍で議論されていることも

多くあるではありませんか。

 

世界がそれを知らないなんて変です。

何かがおかしいです。

 

「言われたことや書かれたこと」、

フーコーの言葉を借りれば

ディスクール(言説)」の中に、

すでにラブライブ!のことが

たくさん現れているわけです。

 

言い換えれば、

ラブライブ!ディスクールがある。」

このようにも言えるでしょう。

 

そうなると考えられることは1つ。

そのラブライブ!の言説が、

査読されるに至っていないということです。

 

このことはさらに、

以下の2つの原因に分解できるでしょう。

 

査読付き雑誌への投稿がまだ

それほど充実していない。

 

査読するコミュニティが発展途上にある。

 

さて、課題が明らかになりました。

ここで改めて、私(たち)のできることを

考えてみます。

 

査読付き論文をいきなり目指すのは、

それが通常英語であることも踏まえると

かなりハードルが高いです。

 

お作法を守るために師事を乞うことも、

当然必要になるでしょう。

 

それにそもそも、

審査のコミュニティが元気でなければ、

自分だけが論文を書こうとしても

やはり限界が感じられます。

 

そんななかで、

いずれにせよできることは、

「言われたことや書かれたこと」の

コミュニティへの貢献

そしてそれだけでなく、

それを研究へと昇華する努力。

こうしたことになりましょうか。

 

上のように書いた理由を述べます。

 

「言われたことや書かれたこと」の

コミュニティがいっそう充実することは、

外から研究畑の人が訪れるためにも、

中から研究をし始める人が現れるためにも、

助けとなるでしょう。

 

そして、

研究、そして審査のコミュニティの発生は、

この延長線上にあるのではないか。

 

このように考えたことが、

言説の充実と、研究へ昇華する努力こそが、

今できる事柄だと述べた理由になります。

 

なお、私が書くであれ、

書くかたが現れるのを待つであれ、

査読論文を究極のゴールにすべきかどうかは

あとでもう少し議論します。

 

テーマ設定:私や世界はラブライブ!の何を知りたいか

 

以上のように、課題が明らかになりました。

 

さて、しかしながらここで最も重要なことは、

その課題を解決することではありません。

 

研究の目的は、

研究成果を出すということ自体ではなく、

知りたいことをしるということ、

であるべきでしょう。

 

だから、ここで明確にするべきなのは、

何を知りたいのか、

何が人類に知られるべきなのか、

ということです。

 

私の考えとしては、

研究を行うのは自分ですので、

第一に、自分の知りたいことを

明らかにするべきだと思います。

 

自分の知りたいことがすでに

論文として公表されていれば、

知れるのでゴール達成です。

 

いまだ論文になっていなければ、

人類を代表してそれを知るという営み、

つまり研究がようやく始まります。

 

このように、

知りたいことを知る活動がまずあり、

そこに「ないものは作る!」という

強い意志があれば、

自然と研究が生まれるというわけです。

 

もちろんですが、

これが唯一の研究テーマの開始点では

決してないでしょう。

 

社会、あるいは何らかの学術界が

知りたがっているのに分かっていない。

それもまた研究の始まりになるでしょう。

 

さらに言えば、

社会や何らかの学術界が

それを知りたがっているのかどうか

いまだ明らかではない「それ」もまた、

ありうるでしょう。

 

 もう少し自分の興味を

具体的にドリルダウンしていきます。

 

 

大雑把な分類を考えると、

A: ラブライブ!それ自体を知りたい、

B: ラブライブ!を通じて初めて分かる

 人間や社会の一側面を知りたい、

少なくともこの2つが考えられます。

 

A も大変に魅力的で非常に悩みますが、

自分の興味としてはやはり

B のほうがより強いです。

 

また、強いて言うなら B の研究のほうが、

ラブライブ!が研究対象となる必然性は

より高く見えるのではないでしょうか。

 

B をさらに分解してみましょう。

 

B-1: ラブライブ!内容に反映されている、

 人間や社会の側面を知りたい。

B-2: ラブライブ!に対するファンの反響から、

 人間や社会の側面を知りたい。

B-3: ラブライブ!が社会に与えた影響から、

 人間や社会の側面を知りたい。

 

さて、ここまで分解してみたところで、

今までの自分の記事も振り返りつつ、

自分の核になる興味をいくつか

思い出してきました。

 

1つは、

B-2 と B-3 の間あたりになりそうですが、

ラブライブ!を通じて人の空間認識が

どのようであるかを知ること。

です。

 

ここでいう「空間」は、物理空間だけでなく、

情報空間、虚構空間を含みます。

 

ファンコミュニティとしての情報空間や、

まちあるきスタンプ上での情報/虚構空間が、

人々にどのように受容されているのか。

 

それらの空間の受容のされ方は、

物理空間と異なるものなのか。

 

もしここで、

3次元の物理空間とはまた違う感覚を

人々が感じているのだとしたら、

人間が空間をとらえる能力、あるいは

その能力の拡張について、

何かしら分析する余地があるでしょう。

 

 

もう1つは、

こちらは B-1 と B-2 にまたがりそうですが、

ラブライブ!を通じて、

人が自分の物語をどのように紡ぎあげるか、

これを知ること。

です。

 

 ひとまずは自分が熱心に取り組みたいことが、

私の場合、明らかになりました。

 

しかし、

この他にもどんな興味を持てるのかは

広く抑えておきたいですし、

それを通じて上の問題に迫るための

既存の方法論がわかるかもしれません。

 

これに加えて読んでいただいているかたにも

テーマ決めの参考にして頂けるよう、

既存の方向性をざっと通覧してみましょう。

 

 

既存の研究:世界の誰かが走ってきた道

 

大づかみに知るにはまず、

アニメ研究入門』および

アニメ研究入門【応用編】』が

良さそうに見えます。

 

これに沿って軸を整理していきましょう。

 

まず、

作品の構成要素を出発点とする切り口が

いくつか散見されます。

文学や物語(の理論)。映像(の理論)。

サウンド(の理論)などです。

 

メディアやモダリティ(様式)も、

これの1つに含まれるでしょうか。

 

他方、

社会のありさま、あるいは

アニメの制作環境を出発点として、

アニメとの影響の及ぼしあいを

とらえる見方があるようです。

 

著作権やノウハウの持たれ方、

ファンコミュニティのあり方、

政策やジェンダーとの関わり。

 

さらには、技術史や文化史、

ファンコミュニティのあり方も、

ここに含まれるかもしれません。

 

いずれにしても、

作品と人/社会が完全に区別されるのでなく、

両者にまたがって存在していることが

感じ取られます。

 

テーマを増やす方向でいくと、

映像の方法や技術というのもまた

大変興味深いですね。

 

ラブライブ!シリーズの中においても

映像技術の進歩に気づかされます。

 

しかし、気づいていないなかでも、

進歩、あるいは社会の風潮を受けての変化が

回を経るごとに起きている可能性が

十分考えられます。

 

一方で、その映像およびそのノウハウが、

人間の心理、典型的にはファンの反応に、

どのような影響を及ぼしているのか

大変気になるところであります。

 

いっぽうで、

前章で上げたテーマとの関連でいくと、

特にメディアミックスの議論は、

空間の認識の仕方と

密接に関わってくるでしょう。

 

ファンコミュニティや文化史も、

これまた然りです。

 

文学理論は、

自分の物語の作り方を考えるには

欠かせないものになるでしょう。

 

なお、『アニメ研究入門』によれば、

文学理論のなかでも特に

「エコクリティシズム」という理論は、

都市論とも関係を持っているということが

分かってきます。

 

そうすると文学理論は、

空間の認識の仕方の理解へも

紐づけられるかもしれません。

 

いずれにせよ、実際に研究を開始するには、

既存研究はよく読まないといけないです。

 

べたですが研究の方法論として、

何かしら1つ好きな既存研究を見つけて、

それを(批判的に)詳しく読み、

新たな観点を付け加えられないか考える。

このように進めていくのが速いでしょう。

 

 

環境:自分の身を世界にどう置くのか

 

少なくとも自分用には、

3つの興味を用意しました。

 

空間の認識、自分の物語、そして

映像の効果です。

 

これらのうちどれに絞るか、

どの既存研究に特に寄り添うか、

これらの課題は次回、

また進めるとしましょう。

 

その前に、

研究をするような環境づくりは

改めて考えねばなりません。

 

会社勤めをしながらでも、

「研究」なるものが可能なのか。

少し情報を集めてみましょう。

 

そんな折、ちょうど去年の秋ごろ、

在野研究ビギナーズ』という本が

出ていました。

 

渡りに船というわけです。

 

何を専門にされているかたかごとに、

章立てが区切られていますが、

ざっと見ていくと、

求められる環境が徐々に浮かんできます。

 

1つはやはり、

成果が公表されたり、

専門家の目にとどまったりするなど、

何らかの形で(いい意味で)

批判される土壌です。

 

大学では比較的参加しやすい土壌に、

大学以外でどのように参加するか、

このように理解してもいいでしょう。

 

ここで面白いのは、

大学以外でそうした場を見つけるほうが

かえって良い場合もあるということです。

 

私が着手したいラブライブ!研究のように、

研究室などの既存の足場がないものは、

これに該当するかもしれません。

 

研究室が作られる前段階を盛り上げるにせよ、

言説の充実自体に価値を持たせるのせよ、

いずれにせよ野良のテキストを生み出すことに

一定の意味を見出せそうです。

 

ただ、批判される場にさらされるには

もう少し工夫が必要でしょう。

 

言説の充実と にわとりたまご ですが、

ラブライブ!かどうか問わないアニメ一般、

あるいはさらに広く「表象文化」一般で

ご研究をされているかたにも、

読んでいただける努力が求められるでしょう。

 

他の追随を許さないような参考資料一覧を載せ、

研究者のかたに向けた実用的な価値を帯びるのも

その方法の1つでしょうか。

 

なおこの発想は、

てぎさんの『黒澤家研究』から頂いたものです。

 

 

あるいは、月並みですが、

研究会などのコミュニティに

足しげく通うべきかと考えています。

 

いきなり自分の文を読んでいただく

機会を得るのは難しいかもしれません。

それでも、

どのような切り口で目下研究がなされているか。

どのようなコメントがなされて

研究が洗練されていっているか。

こうした情報収集にもなります。

 

その名も「日本アニメーション学会」という

機関が存在しますから、

スケジュールをチェックするとともに、

研究がどうカテゴライズされているかは

目を配りたいところです。

 

あるいは、「日本社会学会」とも

密接なかかわりを見出せそうです。

 

ことオタクに関する社会学的アプローチは

永田大輔さんの詳しくまとめてらっしゃる

日本語の論文がありますので、

じっくり拝読したいです。

 

ここまで、

自分のテキストが批判的に読まれる重要さと

その可能性がある方法を書いてきました。

 

このほかにもう1つ必要な環境と思われるのは、

やはり『在野研究ビギナーズ』をたどると、

既存文献が入手できる環境です。

 

こここそがまさに、

研究機関に属するかどうかで

大きく分かれてくる点でしょう。

 

筆頭に挙げられる方法はおそらく、

図書館の活用でしょう。

 

最近の肌感としては、同人誌からの引用も、

一定のプレゼンスを持ってきているものと

考えられます。

 

もしこうした研究にご関心の強い方が

多いようであれば、

研究目的に特化した貸し借りイベントなど

実施したいなとも思いました。

 

もちろん、同人誌に限らず、

参考文献一般についてこれを

行いたい気持ちがあります。

本棚に入りきらないので、

いくつかもらっていただきたいくらいです。

 

もし貸し借りイベントに

ご興味あるかたがいらっしゃれば、

何かのときにお知らせくださいね。

 

また、場合によっては、

いにしえの資料を引っ張るべきときも

訪れるでしょう。

 

これをどう入手するかは課題ですが、

旅行と思って蔵書のある図書館や自治体へ

訪問してみるのもオツかもしれません。

 

以上が2つ目に必要な環境である

文献の入手についてでした。

 

 

なお、『在野研究ビギナーズ』を読むと、

査読論文のみが唯一の研究成果だとは

思われなくなってきます。

 

結果的に到達したい場所ではありますが、

それ以外の読まれ方が様々になされること

それ自体にも価値を見出すべきでしょう。

 

上でも述べましたが、まずは言説、つまり

「言われたことや書かれたこと」の

充実を目指すとしましょう。

 

 

結論:まとめ

 

ここまで書いてきたところで、

2つの目的が達成できたと思います。

 

1つは、

私自身が何を/どう研究したいかを

表明する文ができました。

 

この人はこんなことをし始めているのか、と

名刺代わりの文にできたらと思います。

メタ公表ってやつです。

 

もう1つは、

ラブライブ!研究なるものがあるとして、

その現在位置がある程度描けたと思います。

 

ラブライブ!をご自身で研究したいかたでも、

ラブライブ!研究があれば読みたいかたでも、

いまどうなっているのかについて

確認しやすい文ができたかと思います。

 

最後になりますが、

特に μ's の研究を読みたいかたは、

ユリイカのアイドルアニメ特集

ぜひ読んでください笑。

 

商業誌のラブライブ!批評として

現時点で確認しているものの中では

量、質ともに圧倒的です。

 

あとご存じでないかたがもしいらしたら、

ラブライブログアワード

ぜひ押さえてください笑。

 

今のところ私はまだスタッフでお手伝い

できておりませんので、宣伝というよりは

純粋に重要な文献だという主張なのですが、

Aqours を含んだ圧倒的な言説、

「言われたことや書かれたこと」の充実が

ここにはあります。

 

それでは、

ここまでありがとうございました。

 

そしてもし、

同じ夢を目指したいかたがもしいらしたら、

一緒に盛り上げていきましょう!

 

 

参考文献:気づいたばかりの夢に向けて

 

アニメ研究入門―アニメを究める9つのツボ

アニメ研究入門―アニメを究める9つのツボ

 

出版社サイト

 

アニメ研究入門【応用編】: アニメを究める11のコツ

アニメ研究入門【応用編】: アニメを究める11のコツ

 

出版社サイト

 

在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活

在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活

 

出版社サイト

 

 

てぎ (2018)、黒澤家研究 創刊第一号、サークル名:もやしブックス

 

 

tegi.hatenablog.com

 

 

www.jsas.net

 

 

jss-sociology.org

 

 

永田 大輔, 「オタクを論ずること」をめぐる批評的言論と社会学との距離に関して, 年報社会学論集, 2017, 2017 巻, 30 号, p. 134-145

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kantoh/2017/30/2017_134/_article/-char/ja/

 

 

出版社リンク

 

 

ishidamashii.hatenablog.com

*1:もちろん、Google Scholar にあるものすべてが査読論文というわけではないでしょう。しかし逆に、査読論文ならばほぼここで見つかるものと考えられます。