読書を通じてサンシャイン!!を楽しもう #-1 準備の準備編 ラブライブ!は「都市」を再定義するのか?

 

こんにちは。センケイです。

皆たまらなく好きですが、

一番の推しは高海千歌です。

 

今、

全7~8編の考察ブログを書いていて、

その準備編さえも未入稿ですが、

劇場版についてある仮説が浮かんで

かなりハッとしたため、

鮮明なうちにまとめたいと思います。

 

この記事の目的は、

私が『僕らの走ってきた道は…』を鑑賞し

その壮大さに心を打たれたのはなぜか、

これを明らかにすることです。

 

このため、

個人の興味を超える主張にはならないこと、

あらかじめご容赦のほどお願いいたします。

 

それでも、同じ感想を共有できるかたには

一定のメッセージをご提供できるものと思い

公開記事として文章にします。

 

なお、劇場版のネタバレは、

Youtube に公開されている

冒頭7分部分のみに限るようにします。

 

ラブライブ!は「都市」から始まる

なぜ『僕らの走ってきた道は…』から

あれほどまでの壮大さを感じられたのか。

 

 その理由を明らかにするには、

「都市」の概念が欠かせません。

 

このため、少し長くなりますが、

まずは「都市」を理解したいと思います。

 

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!1期1話/
©プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
千歌がスクールアイドルを志したきっかけは、都市の中の大型ビジョンでした。

まずは表記を統一します。

μ's の物語である『ラブライブ!』を無印、

ラブライブ!サンシャイン!!』をサンシャイン!!、

ラブライブ!シリーズ全体をラブライブ!

と表記します。

 

無印、サンシャイン!! とも、

スクールアイドルを開始するきっかけは

「都市」における大型ビジョンでした。

 

言い換えれば、ラブライブ!

「都市」から始まる物語だと考えられます。

 

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出典:ラブライブ!1期1話/©2013 プロジェクトラブライブ!
高坂穂乃果がスクールアイドルを志したきっかけも、この大型ビジョンでした。

 

ここで、「都市」とは何でしょうか。

これは実はかなりの多義語です。

 

まずざっと理解するなら、

コトバンクにおけるデジタル大辞泉の解説、

多数の人口が比較的狭い区域に集中し、その地方の政治・経済・文化の中心となっている地域。「商業都市」「学園都市」

これが参考になりそうです。

 

まずは、

人が集まっている中心である。

くらいの理解が良さそうです。

しかしここでは、

さらに深堀したいと思います。

 

なぜなら、第一に、

都市という言葉に含まれる

より細かなさまざなな意味が、

『僕らの走ってきた道は…』の理解に

重要だと考えられるからです。

 

第二に、

国や時代によって、

都市には様々な意味、文脈、物語

付加されているはずだからです。

 

以下では都市を明らかにするため、

① 都市とは何か

これに加えて、

都市社会学・入門』になぞらえて

② 都市が何を作るのか

③ 何が都市を作るのか

 

この3つの観点から、

都市の意味を明らかにしたいと思います。

 

②と③はやや間接的です。

 

②は原因を結果から理解する仕方、

例えば

”風とは、桶屋を儲けさせるものである”

と風を理解するような方法です。

 

③は逆に原因から結果を理解する仕方です。

例えば

”桶屋とは、風に儲けさせられるものである”

と桶屋を理解するような方法ですね。

 

都市とは何か

まずはいかにも定義らしい定義を

見ていきましょう。

 

同『都市社会学・入門』は、

冒頭で以下の3つの定義を与えます。

 

人口学的定義:

都市とは、人口の集中している場所である

 

物的定義:

都市とは、道路や建物などの物的構造からなる人工的環境である

ここには、建物を壊して再開発する

新陳代謝の意味も含まれるようです。

 

制度的定義:

「都市」とされている団体を都市とみなす。

これはかなり形式的な定義ですね。

 

なお、無印劇場版の物語も、

空港からすぐさま到着するニューヨーク、

すなわち「都市」で動き始めました。

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出典:ラブライブ!The School Idol Movie/2015プロジェクトラブライブ!ムービー

ホテルまでのインフラ、ホテル、

そしてその窓の外に、

人工的環境の様子が見てとれる、

問答無用の都市です。

あるいは、空港=都市からこの物語が始まった、とする見方も可能かもしれません。
 これはこれで示唆に富みそうなので、どこかの機会に書きたいです。

 

またニューヨークは、星空凛によって

「少しアキバに似てるんだよ」、そして

「次々に新しく変化していく」と

表現される点で、前述の秋葉原ともに、

物的な新陳代謝を持つ街であることが

ほのめかされていますね。

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出典:ラブライブ!The School Idol Movie/2015プロジェクトラブライブ!ムービー

 

さて、ここまでの都市の定義はまだ、

あまり物語や意味を感じるような

定義ではありませんね。

 

では、ここで、

渋谷という街を考えてみましょう。

 

渋谷という街にともなう

独特のイメージは何でしょうか。

 

広告都市・東京』が吉見さんの主張を

引用しつつ言うには、渋谷は、

街そのものが(ファッションの)広告、

そして舞台装置であったというのです。

 

今ではこの傾向は薄まりつつある、

とされるものの、根強いイメージが

なおも渋谷に漂っていると思います。

 

ここで広告というのは、

必ずしもネガティブな意味ではないです。

 

パルコを中心に西武グループのお店が並び、

そこまでの道のりさえも楽しく歩けるよう、

オシャレな空間が整っていたようです。

 

道のりに個々の広告が出されるだけでなく、

このような空間全体、あるいは

おしゃれをして歩く人さえもが、

西武のお店での購買を誘うような

広告になっていた、というわけです。

 

以上の見方を整理すると、

「都市とは広告である」、

という1定義が得られます。

 

これだと少し味気ない表現なので、

この後使う「脱舞台化」とペアにし、

「都市とは舞台化した場所である」

という定義を得ましょう。

 

なお、サンシャイン!!1期7話において、

「わー見て見て!ほらあれ、

 スクールアイドルの広告だよね!?」と

広告が楽しさを生むアイテムであることが

示されたり、

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!1期7話/
©プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!

 

さらに続くカットで、

渋谷区の街である原宿が

意味のある特別な街であると

示唆されたりもします。

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!1期7話/
©プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!

 

ここまでのところで、

私が沼津市について何を言いたいか

気付かれたかたもいらっしゃるかも

しれません。

 

しかし、タネ明かしは

次の章の役目にしましょう。

 

なお、舞台化ということばは、

しばしば神話とセットで語られるので、

「都市とは神話を伴う舞台である」

という理解をしても良いかもしれません。

 

ところで、

脱舞台化という概念もまた重要です。

 

「都市」としてよく引き合いに出される

渋谷ですが、渋谷さえも、

もはやこの舞台化の意味での

都市ではなくなりつつあるというのです。

 

前述の『広告都市・東京』の他に、

渋谷学叢書4』が実データ付きで

主張するように、

渋谷駅周辺にどこにでもある量販店が

あふれてきており、

専門店があふれるような特別な場所では

なくなってきたというのです。

 

この脱舞台化は「郊外化」や

「無印都市」などとも表現されます。

(『無印都市の社会学』より。)

 

なお、この脱舞台化という言葉も、

必ずしも否定的な意味ではありません。

 

 

ここまでをまとめましょう。

 

都市とは、

・人が集まるところ。

・人工的環境。

・都市とされている団体。

・舞台化された場所。

以上4つの定義が考えられることを

見てきました。

 

なお、「人が集まるところ」について、

観光やビジネスで一時滞在する人を

これに含める見方もあります。

(『集客都市』。)

 

 

都市が何を作るのか

繰り返しますが、いま、

『僕らの走ってきた道は…』に

感じられる壮大さを理解するため、

その補助線として、「都市」の定義を

確認してきています。

 

重要な定義のいくつかを

一通り確認できたと思います。

しかし、

都市の人間関係についての確認が

まだ不十分なため、もう少しだけ

定義集めにお付き合いください。

 

 

前述の『都市社会学・入門』では、

都市が生み出す人間関係の議論が

多数比較されています。

 

その中でも例えば 25 P で述べられる、

パークの「第二次的関係」が

役に立ちそうです。

これは、地縁や血縁とは異なる、

間接的で自由な関係をさすようです。

 

1925年の議論だそうですが、

以降の議論にもこの考えが

通底しているように思えます。

 

同 42P ではジャノウィッツを引き、

有限責任のコミュニティ」、つまり

自発的参加による、退出自由の

地域コミュニティについて

議論しています。

 

このように、地域コミュニティと

自由・間接的な人間関係とは、

お互い対立しあうものではなく、

境界があいまいで混じりあう、

というものであると言えるでしょう。

 

まとめると、都市的な人間関係とは、

地域コミュニティは弱まりつつも存在し、

加えて間接的な関係のレイヤーも生じる。

そのようなものと言えましょうか。

 

かいつまんで言えば、典型的には初対面の人付き合いが増える点に、

 都市の特徴が出ている、と言えるでしょうか。

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出典:ラブライブ!The School Idol Movie/2015プロジェクトラブライブ!ムービー
初対面でうまく対応する例です。

何が都市を作るのか

最後に、都市が作るものを確認します。

ここでも『都市社会学・入門』を

引いていきます。

 

 

同書は 208P で、

「文化生産」が都市成長の原動力として

とらえられ始められている、

としています。

 

文化生産は、知識生産のひとつとされ、

アートや衣料デザインといった活動を

差します。

 

自発的あるいはクリエイティブな活動が、

都市を作るということですね。

 

クリエイティブ都市論』では、

こうした芸術やデザインの活動を、

(他地域の人をお客さんにできるため、)

地域の経済を成長させやすい例に

含めています。

 

以上を加えて、都市とは、

・人が集まるところ。

・人工的環境。

・都市とされている団体。

・舞台化された場所。

・自由な人間関係が作る場所。

・クリエイティブな活動が作る場所。

この6点にまとめられそうです。

 

サンシャイン!!が促す、都市の再定義

さて、

無印からサンシャイン!!に続く

一連の作品群の、

功績を述べる準備が整いました。

 

いよいよ本論に入りましょう。

この作業によって、

『僕らの走ってきた道は…』の意味が

確認されていきます。

 

一応ことばの使い方を定めておくと、

本記事において、「都市の再定義」は、

以下の2つを含む意味で使います。

 

① 都市であることの再発見

再都市化

 

ここで、「再」は、

もともと都市であったところに、

いっそうの都市を見出す、

という意味で使います。

 

なお、①再発見と②再都市化の間には、

都市を見つけるか、都市を作るかという

大きな違いがありますが、

ここでは精密な区別は行ないません。

 

なぜなら、

『僕らの走ってきた道は…』の理解に

この区別はさほど重要ではなく、また、

この検証は非常に難しく

そもそも不可能かもしれないためです。

 

沼津市は都市として再定義されたのか。

要点を3点に圧縮し、考察します。

・人口

・「舞台化」

・コミュニティ

 

沼津市の人口と観光人口

まずは人口学的に、

もともとの都市としてのポテンシャル、

およびサンシャイン!!の影響を

確認しましょう。

 

全国の市 人口ランキング」によれば、

2018年10月の沼津市の推計人口は、

全国792市中の 121 位にあたる、

190,842 人とされています。

 

これは県庁所在地の松江市山口市

鳥取市甲府市に匹敵する規模であり、

中堅の都市と言えるでしょう。

 

この意味では、

沼津市は再都市化されたというより、

再発見されたとみるほうが

適切ですね。

 

100位以下となると下位に見えるかもしれませんが、これは、

 日本の市町村の人口上位の多くが、いわゆるベッドタウンに占められているためでもあります。

 平成27年国勢調査において、昼間人口>夜間人口の市だけに絞って調べると、

 2015年時点で沼津市の人口はそのうちの58位に位置します。

 ひと県に約1つレベルのレアリティですね。)

 

さてここで、

観光人口の変化はあったでしょうか。

これがもし大きいものであれば、

再都市化にも貢献したと言えそうですが。

 

最初にハードルを下げておくと、

その影響はそこそこです。

 

言い換えれば、それだけ沼津市

もともとの都市としての力・規模、

そして集客力が大きいということです。

なお、このことは後の議論に効いてくるので重要です。

 

沼津市公式ホームページにある観光業の

資料では、2015年以前から

観光客が増加傾向にあることが目立ち、

アニメの効果は見えにくいです。

 

ここで、静岡県公式ホームページより

沼津市の月ごとの観光人口を調べ、

図表にしました。

 

月ごとの観光人口、および、

その2013年度からの増分を見ると、

アニメ放映開始の 2016年7月が

突出しています(グレーの枠)。

 

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沼津市の月別観光交流客数の推移と、2013年の同月と比較した増分。(観光交流客数とは、宿泊客数と、観光施設の訪問客数を合わせたものだそうです。)

 

見方を変えて、2013年度の代わりに、

前年同月からの増分を見ると、2017年度、

全ての月が増加に転じました。

 

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沼津市の月別観光交流客数の、前年同月との差。

 

確かな影響は感じられました。

 

しかし、都市化されたという

主張をするには、

やや物足りない数値です。

 

そこでいよいよ、

より文化的な意味での、

「都市」の出番です。

 

サンシャイン!!による沼津市の再「舞台化」

ここまでお読みいただいたかたには、

「舞台化」ということばが、

単に舞台になったという意味を超え、

街そのものが人を楽しくする装置として

機能するようになった、という意味で

お読みいただけるかと思います。

 

沼津市役所さんやアベリーさんが

仰るように、

駅前や商店街のさまざまなところに、

サンシャイン!!を象徴する記号が

設置されていると分かります。

 

 

歩くだけでも楽しく、

そして購買意欲も促すであろう、

意味を持った”場所”が

立ち上がってきています。

 

 

ただし、

ここで強調しなければならないことが

3つあります。 

 

第一に、

地元の方々の好意的な受容があって、

これが成立していることです。

 

このため、当記事では以降、

作品が沼津市を都市化したとは言わず、

作品が沼津市の都市化を促した、

という立場を取ります。

 

地元の方々の需要については

下記のサイトが参考になります。

●「ラブライブ!サンシャイン!!」関係アンケート2017

 

少なくとも商店主のかたからは、

横断幕等を抑えるべきというご意見より

推進すべきというご意見のほうが多く、

やや好意的にみて頂いているものと

考えられます。

 

第二に、

沼津市全体がエンタメの空間に

なったわけではない点です。

 

渋谷区でも、路地を外せば、

ファッションとは無関係の

閑静な住宅街と生活が

有り続けているのと同じように、

沼津市もまたそうであるはずです。

 

第三に、

”場所”を感じさせる駅前や商店街も、

やはり公共の空間であることです。

 

このため、他の街ではできないような

非常識な服装や持ち物は

避けなければならないでしょう

(この作品が愛されるためにも)。

 

閉じられたハコの中だけでなく、

公共の空間がエンタメ化するからこそ

舞台≒「都市」としての価値が

際立つものと考えられますから、

この意味でもとても重要です。

 

 (私のような者がこうしたことを言うのは大変おこがましいかもしれませんが・・・、

 作品・街とも悪印象になってしまう事のないよう配慮したく、書かせていただきました。

 

以上3つの留保付きであれば、

街自体が世界観を作る装置となり、

まさしく「都市」が立ち現れた、

そう理解してよいでしょう。

 

ここで、 

この舞台化に伴う「神話」もあるか、

検討してみましょう。

 

ここでは、「神話」は、

ギリシャ神話といった

伝統的な神話の意味に限らず、

もう少し広い意味で捉えます。

 

すると、少なくとも1つ、

思い当たる出来事があります。

 

沼津バーガーさんや、やま弥さん、

ほかにも多くのかたがたが、

劇場版公開直前の 2019/01/02 に

沼津に(二重の!)虹がかかった

ツイートされていました。

 

サンシャイン!!の作中では、

Aqours は、不運な出来事も含め、

様々な出来事を引き寄せます。

 

しかし、作中において Aqours は、

確率的≒操作不可能な事態の数々を、

走る道≒輝きへと変えていきます。

計画的偶発性』とも言えるでしょう。

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!2期7話/
©プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
 学校説明会と予備予選の両立を妨げる出来事が次々に起こる中、工夫と足で乗り越え、虹に向かって「走ってきた道」の1つを残しました。
「だって・・・、だって・・・!虹がかかったもん!」

しかしここで、サンシャイン!!は、

(作者が自由に偶然を設計できる)

アニメ作中だけではなく、

なんと現実世界でも、確率的な出来事を

味方につけてしまいました。

 

沼津市には結果的に、

この文脈を通じて、

「舞台」としての都市に、さらに

神話も伴った、と言っても

大げさではないでしょう。

 

サンシャイン!!による包括的コミュニティのきざし

だいぶん、

都市らしさが垣間見えてきました。

 

最後にコミュニティについてです。

 

サンシャイン!!を通じて、

間接的で入退出自由な人間関係、

「都市」的な人間関係が

成立していると言えるでしょうか。

 

例えば、

前掲のアンケート2017の

レジメ(成果報告書)では、

制作者・行政・地域の連携がスムースに行われていること、ファンをおもてなしする体勢が整っていること、実際にファンの訪問が増えていること、ファンのマナーも概ね良好なこと、 

と、

ファンや商店街だけでなくさらに

製作者・行政という集団の間で、

選択性の高い人間関係のありかたが

示唆されています。

 

同報告書における下記の記述からも

従来の地域のコミュニティを超えた

広い人間関係の現われが

示唆されています。

ラブライブ!サンシャイン!!」を応援しようということで、今まで交流のなかった各店舗・各商店街組合同士が連携する機会が生まれ、地域を活性化させようとする意識が刺激されたというプラス面の効果が認められる。

 

できればより定量的な情報も

得たい所ではありますが、

「都市」的な交流の在り方が

示唆レベルで伺われました。

 

さて、少し視点は変わりますが、

こんな興味深い例もあります。

 

沼津港近隣のお店の丸勘さんでは、

手書きの絵がお店の内外を

飾っているようなのです。 

 

もし、

この絵が集客に寄与しているなら、

そしてそれなりの数のお店で

似た創作活動があるのなら・・・、

まさに「文化生産」としての都市も

立ち現れていると言えるでしょう。

 

また、もう1点、

大変興味を惹かれるのが、

ファミリーマート沼津港前店さんが

ファンのかたとご交流されていたり、

ココスの沼津IC店さんや大岡店さんが

沼津まちあるきスタンプに

参加されていたりする点です。

 

 

前掲『無印都市の社会学』では、

こうしたフランチャイズのお店は

脱舞台化の最たる例であり、

特別な”場所”ではなく、

特別な交流もしない、

だからこそ安心できる空間だ、

そういう位置で了解されていました。

 

しかしここ沼津市では、

そうしたコンビニやファミレスもまた、

特別な意味を兼ね備え、かつ、

交流の在り方も作っています。

 

沼津市の場合、

・舞台化 vs. 脱舞台化

・商店街 vs. チェーン店

という従来の二項対立を超えた

新たな交流と”場所”の在り方を

生みだしつつあるのでは

ないでしょうか?

 

誤解を恐れずに言えば、

沼津市が新しい都市の在り方をも

提案しているかのように

感じられます。 

 

以上のように、

コミュニティや活動の面からも、

都市らしさを示す事例が

幾つか確認できました。

 

整った『僕らの走ってきた道は…』の条件

ここまで、複数の側面から、

沼津市がいかに都市として再発見、

あるいは再都市化されてきたかを

確認してきました。

 

これでようやく、

次の仮説を主張できます。

 

ラブライブ!は、

無印本編、無印劇場版、

そしてサンシャイン!!本編、

いずれも都市から始まっていた。

 

ここにおいてラブライブ!は、

沼津市都市空間を立ち上がらせる

きっかけを作ってしまった。

あるいは少なくとも、

沼津市都市であることを

皆に知らしめてしまった。

 

このことが結実して、

沼津市を舞台とすることを守りつつ、

都市から物語が始まる系譜をも継ぐ、

両立が難しいかに見えたパノラマを

見事に実現させた。

 

作品が現実の一部を変えてしまい、

この大きな反響を活用してはじめて

物語の続きが可能になったという

スペクタクルを成した。

 

このスケールの大きさこそが、

曲が壮大に感じられる理由であった。

以上の仮説を結論とします。 

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow/©2019 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!ムービー

賑わいの中をカメラが駆け抜ける、

吸い込まれるようなシーンです。

 

驚くほどの滑らかな動きが

曲のダイナミズムと高めあいます。

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow/©2019 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!ムービー

この仲見世商店街のロケは、

作中で初めてではありません。

 

しかし、

この尺の長さでアーケードが

贅沢に映し出されるさまは、

人気のお店が多数知られる今や、

まるでアニメのほうが市街地に

引っぱり出されたかのようです。

 

賑わいの中で手と手を合わせる

名シーンの系譜を、

脈々と受け継いでもいます。

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出典:ラブライブ!The School Idol Movie/2015プロジェクトラブライブ!ムービー

加えて言うなら、

電撃G’sマガジン号外 ラブライブ!サンシャイン!! Aqours Winter Special 2018』の

座談会に見られるような

地域と作品との連携を受け、

さらなる自信がみなぎって

いるようにも見えます。 

 

そこに何かがあるとされる街、

ラ・ラ・ランド』のロサンゼルスと

対比して考えてみても

面白そうです。

 

さらに、

Aqours とカメラの広がる動きが

カッコイイこのカット。

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow/©2019 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!ムービー

市外のファンにとっては

舞台探訪の始まりの場所の1つ、

沼津駅がせりあがってきます。

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow/©2019 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!ムービー

この外へと広がる動き・視点が、

私たち訪問者の旅の広がりと、

劇中の Aqours の物語の広がりとを、

同時に予感させるかのようです。

 

作品をきっかけとして

都市として再定義された沼津市

そしてその魅力を活用し続ける

本編のその先の展開との、

見事な融和がお披露目されました。

 

なお本編中でも、不思議なことに、

ビジョンを通して Aqours を知る

私たちと同様に、

Aqours もまたビジョンを通して

Aqours を知るときがあります。

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出典:ラブライブ!サンシャイン!!2期7話/
©プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
名古屋市内の大型ビジョンを通じて初めて、自分たちの視聴回数に気付く場面。

Aqours を引き付けた都市のビジョン。

都市のビジョンを引き付けた Aqours

この循環関係もまた、作品を楽しむ

大きな鍵の1つになりそうです。
 

今後の展望

最初に少しだけ書きましたように、

これから、舞台探訪と合わせて、

全7~8編ほどの考察ブログを

進めていく予定です。

 

具体的にどのような切り口になるか、

今後の展望を列挙していきます。 

 

今後の投稿予定

 

準備編

ここでは、ブログを書いていく動機を

詳しく顧みつつ、

既往の考察ブログ、書籍、論文を

概観していきます。

 

私たちが作品を受容する仕方もまた

作品の一部を創り出すのだとすれば、

考察の動機を考えることも

たいせつに違いありません。

 

移動と都市編

当記事の観点をさらに掘り下げます。

モビリティーズ――移動の社会学

に見られるように、今や、

移動そのものも空間の1種であると

理解されつつあります。

 

本編における沼津←→東京間の

往復が持つ意味は何か。

そのことが”場所”や人間関係、

あるいは情報空間にどのような

意味をもたらすのか。

こうしたことを探求していきます。

 

存在と情報編

前述の情報空間について、

さらに掘り下げていきます。

LINE を通じて待ち合わせるなど、

情報空間から生身の関係への影響は

今や自明のものになってきました。

 

さらに加えて、

情報空間の1種である虚構空間が

現実にどう影響しているのか。

都市におけるビジョンとは

一体何だったのか。

こうした問いも生まれてきます。

 

これらの問いを通じて、

サンシャイン!!の面白さと意味とを

振り返っていきます。

 

視覚と聴覚編

何よりもまず映像作品である時点で

そうなのですが、

歌とダンスが重要な位置を占める分

なおさら視聴覚については

考えていく意義があります。

 

他の記事は主に

社会学への興味を絡めることで

構想していますが、

ここでは心理学の観点からも

映像から意味を引き出せないか、

挑戦してみます。

 

自己物語編

他のものと粒度が異なりますが、

サンシャイン!!においては

欠かせない観点だと考えています。

 

典型的には、

本編2期13話において、

今までの自分たちの物語について

その意義を振り返るという

重要なシークエンスがあるためです。

 

下図は『ジョジョの奇妙な冒険』中で

静止した銃弾に力学的エネルギーを

少しずつ蓄えていくシーンです。

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出典:ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 Episodio 08/©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社ジョジョの奇妙な冒険GW製作委員会

まるでこのシーンのように、

サンシャイン!!の全26話の意味が

「ちょこっとずつ」 

蓄積されることによって、いかに

『WONDERFUL STORIES』を

際立たせることになるのか。

そして Aqours はどのようにして

Aqours を理解してきたのか。

 

これを読み解いてみたく思います。

 

文化と他者編

近年の社会の動向として、

自分のありさまを自分で定義せねば

ならなくなった、

とする見方が有力になっています。

 

この現代社会の潮流は、前述の

AqoursAqours を理解する仕方に

反映されているとみるのが

自然でしょう。

逆に、現実が物語から影響されている、

その可能性も十分に考えられます。

 

前述の自己物語の興味を掘り下げつつ、

そこにおける社会、文化、他者の意味を

作品理解のために探っていきます。

 

自己組織化編

社会科学的な視点が続いたので、

私の元専攻に近い

自然科学的な視点からも

読み解いてみたいと思います。

 

2期挿入歌『Awaken the power』

この曲を中心に、

世界のマクロな制御ではなく

世界の内側から現れる力で

秩序・構造を生むかに見える表現が

あちこちで見られます。

 

まずはこうした理解の仕方が

作品内の構造を考えるうえで

有効な視点になるのか。

やはり作品の面白さを引き出すため

可能性を探索したいと思います。

 

このほかにも、思いつく限り、

言語の観点、あるいは

合意形成の観点などが、

エッセンスの理解に役立ちそうと

考えています。

 

月に2~3記事を目標に

少しずつ投稿していきますので

楽しみにお待ちいただけたら

大変うれしく思います。

 

当記事における課題

今回、何か所かにおいて、

定量的な根拠が十分に示せなかった

そういう箇所がありました。

 

例えば、2017年や2018年の

売店舗数が公表された際、

そうしたデータで裏を取ることで

より議論を詰められそうです。

 

また、「計画的偶発性」の用語は

理解を Wikipedia に頼っているため、

より論拠を固めることが

好ましいですね。

 

以上のような難点は残りますが、

この記事によって、

少しでもサンシャイン!!の面白さが

増すように感じて頂けたり、

考察の上でご参考にして頂ければ、

僥倖の極みです。

 

それでは、

ここまでお読みいただき、

ありがとうございました。

 

また、沼津市かどこかで

お会いしましょう。

 

 

 

参考文献

書籍

都市社会学・入門 (有斐閣アルマ)

都市社会学・入門 (有斐閣

アルマ)

 

 

 

増補 広告都市・東京: その誕生と死 (ちくま学芸文庫)

増補 広告都市・東京: その誕生と死 (ちくま学芸文庫)

 

 

 

渋谷らしさの構築 (渋谷学叢書)

渋谷らしさの構築 (渋谷学叢書)

 

 

 

無印都市の社会学: どこにでもある日常空間をフィールドワークする

無印都市の社会学: どこにでもある日常空間をフィールドワークする

 

 

 

集客都市―文化の「仕掛け」が人を呼ぶ

集客都市―文化の「仕掛け」が人を呼ぶ

 

 

 

クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める

クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める

 

 

 

 

 

モビリティーズ――移動の社会学

モビリティーズ――移動の社会学

 

 

 

映像作品

www.lovelive-anime.jp

 

www.lovelive-anime.jp

 

www.lovelive-anime.jp

 

www.lovelive-anime.jp

 

www.lalaland.movie

 

jojo-animation.com

 

 

Web ページ・論文

kotobank.jp

※ 2018/01/19 最終アクセス

 

 

都道府県市区町村」

uub.jp

※ 2018/01/19 最終アクセス

 

 

www.e-stat.go.jp

※ 2018/01/19 最終アクセス

 

 

静岡県沼津市公式ホームページ」

www.city.numazu.shizuoka.jp

※ 2018/01/19 最終アクセス

 

 

静岡県公式ホームページ ふじのくにへようこそ」

toukei.pref.shizuoka.jp

※ 2018/01/19 最終アクセス

 

 

赤枝尚樹, 2011, 「都市は人間関係をどのように変えるのか――コミュニティ喪失論・存続論・変容論の対比から」『社会学評論』62(2): 189-206.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsr/62/2/62_189/_article/-char/ja/

 ※ フィッシャーが、都市は選択性の高い

  人間関係を増大させている、と

  述べている点について。

 

 

●「ラブライブ!サンシャイン!!」関係アンケート2017

http://ccc.sakura.ne.jp/ls2017/index.htm

※ 2018/01/19 最終アクセス

 

 

ja.wikipedia.org

※ 2018/01/19 最終アクセス