Mix up ! ゆめの羅針盤になだれ込んでくる想い

こんにちは。センケイです。

 

「スクールアイドルミュージカル」の追加公演が去年の冬ぶりに実施されるということで、冬にはついにタイミングを逃してしまった分、今回は全力でチケットをもぎ取りに行きました。

 

素晴らしい点がとても多く筆舌に尽くしがたいのですが、全部書こうと思うと無限の作業になってしまうため、今回は特に心を打たれた「ゆめの羅針盤」に絞って書くとしましょう。

 

この話をするにあたり、合わせて「いつかわたしも」という楽曲について書く必要があるでしょう。

 

以下、ネタバレを含みますので、それでも良いかたはお付き合いいただけたら幸いです。

それでは、始めていきましょう。

 

 

手元に参考になる映像資料がないためうろ覚えになりますが、「いつかわたしも」が披露されたのは、神戸の「ハーバーランドの広場」ということだったと思います。

このハーバーランドというエリアが非常に広く広場も多いために厳密な場所がわからないのですが、セットにポートタワーが描かれていたことから、おそらくはモザイク大観覧車の前辺りでしょうか?

…少し脱線しました。「いつかわたしも」が歌われた状況設定の説明に戻りましょう。

 

学校の方針から、アイドル活動を含めた余暇活動があまり盛んではなかった椿咲花女子高校。その椿咲花に属する主人公の椿ルリカは、そんな折、この舞台に登場するもう1つの学校である滝桜女学院のアイドル活動を見て、自分もやってみたいという想いを確かなものにしていきます。

のちに部活を発足して、初ライブの舞台として選んだのが、ハーバーランドの広場。ここで初ライブをするまでには実に複雑な経緯があるのですが、ここでは省略します。

私の記憶が確かならば、複数のスクールアイドルが出演するハーバーランドのイベントという建付けだったはず。ここに、ルリカたちの部が出場することになっていました。が、訳あってルリカ以外の椿咲花のメンバーはある事情で不安を抱え、このライブに当日来るかどうかも怪しいという状態になっていました。他のメンバーの様子に心細さを覚えるルリカ。

…このような状況下でイベントは始まり、ルリカたちよりも前の出番でパフォーマンスをする、他校と思しきスクールアイドルによって、「いつかわたしも」の演目がなされます。

 

 

このような状況設定ですから、個人的には、前日不安を抱えながら解散したルリカたちがどうなってしまうのかハラハラしており、当初は正直「いつかわたしも」のことを休憩時間か何かとして受け取ろうとしてしまっていました。

しかしすぐに、休憩として受け取るにはあまりに惜しい内容だと気付かされます。

他校のスクールアイドルとしてダンスをするのは「アンサンブルキャスト」というキャストさんたちで、このキャストさんたちは、今までは椿咲花や滝桜の生徒たちとして、主演 12 名をサポートする役目がほとんどでした。

しかしここではまるで重い枷を外したかのように、曲の主演として、独自のかっこいい衣装とともに、全力のクオリティでの歌とダンスを披露されるのです。

曲の前向きな歌詞と合わせて、大変素晴らしい楽曲の披露となりました。

 

さらに良いのは、その全力のクオリティ故に (椿咲花と比べて) 大先輩に見える彼女たちが「きっときっと いつかはきっと デビューする日 夢見て」という歌詞を歌ってらっしゃる点です。

夢に向かって大分進んできているのであろう熟練の他校のスクールアイドルも、まだまだ夢を追いかけていてその途中にいる。いや、まだ出発点にいるかのような新鮮な気持ちで、かつ楽しく夢へ向かって行っている。このことに私は、稲妻に打たれたかのような衝撃を受けました。大先輩であってもなお、遠くに夢を仰いでいることに。そして努力をしばらく続けた後でも夢はまだまだずっと新鮮だということに。彼女たちはかなり進んだ先で、それよりももっと先に輝く未来を見ている。この構図に虜になってしまいました。

 

 

さて、先行するそんなスクールアイドルのお披露目が終わると、いよいよルリカたちの番。しかしはじめはやはりというか、気の毒にもルリカ一人でぽつねんと登場することになります。

しかし…、そう。仲間が助けてくれますよね。まずは同級生で幼馴染の皇 (すめらぎ) ユズハが駆けつけ、一緒に歌ってくれるようになります。

ここで興味深いのは、ユズハがルリカに対して「もちろん助けに来ますよ」といった趣旨のことを話す場面での、他校のスクールアイドルたちの無関心さ。いや、仲間内の会話に対してちらちら見たりするほうが変なので、それが普通なわけですよ。ところで、この無関心な素振りが、次の瞬間に活きてくることになります。

 

この後、続々と合流してくるルリカの仲間たち。これで、スクールアイドル活動を始めようとした当初の5人が揃います。

ここで椿咲花の5人が魅せるのは、どうやらこの時点での新曲、ゆめの羅針盤 (羅針盤は「コンパス」と読みます)。

 

素朴にやりたいからやるんだという気持ちを歌うこの曲は滝桜のスクールアイドルに対するカウンターにもなっていますが、これはラブライブ!世界全体との対比で考えても素晴らしいですよね。

優勝候補として名を連ねたり、そうでなくても動画配信を通じて多くのファンを獲得していたりと、ラブライブ!において脚光を浴びるのは主にそうした学校でした。しかし一方でラブライブ!が描いてきたのは、スクールアイドルとして活動することが素朴にいかに面白いことであるかということだったはず。

ラブライブ!世界では大変多くのスクールアイドルが活動しているので、優勝や人気獲得なんてことは考えもしないような学校の中でも、今を最高にときめいている学校がたくさんあって然るべき。個人的には「ゆめの羅針盤」はまさにそれを描いているようにも見えて、ついにラブライブ!世界における青春のひとときを見たようにも感じたのです。

 

先程、他校のスクールアイドルたちがルリカたちの会話に対して (それはそうなのだが) 無関心であることを述べました。しかしなんとこの「ゆめの羅針盤」においては、途中から一緒に歌ってくれているではありませんか!

ミュージカルにおいては、実際の作中世界で登場人物たちが歌ったり踊ったりしていないと考えるほうが自然な場面もあります。

これを踏まえて個人的に解釈するとしたら、他校のスクールアイドルたちはきっと「ゆめの羅針盤」を歌うルリカたちに対し、頭を揺らして没入するくらいには聴き入ってくてていたのではないかな、と思います。それをミュージカル的に少し誇張していたのが、一緒に歌うという表現だったのではないか。他校のスクールアイドルたちは、心のなかで歌うくらいにはシンクロしてくれていたのではないか、と。

いずれにしても、それまで無関心であった周囲の人々を引き込むほど、初心に燃えるルリカたちの演目が輝かしいものであったということですね。

 

…しかしなんと、それだけではとどまりません。

大盛りあがりを見せて涙したサビの後、落ちサビの合間に聞こえてくるのは…

「きっときっと いつかはきっと」

えっ!これって「いつかわたしも」じゃないですか!?

 

個人的に曲と曲とが合体するのが好きすぎるので、感動のピークでうわ〜っ!ってなったと思ったらそれを更に超えるビッグウェーブ!が来て、感情が追いつかなくて悶えることになりました…。

でもこれが面白いのはそんな僕の趣味嗜好に限った話ではないと思うんですよ。

我関せずだったはずの他校のスクールアイドルたちが、曲にシンクロするばかりか、今や一緒に曲を作ってくれているのです!

ではこれはミュージカルの描写としては何を描いているのか?

さっき以上に深読みだとは思いますが、個人的にはこれは、他校のスクールアイドルたちがルリカたちの歌を聴き、自分たちの夢を歌に重ねている様子なのではないかと思ったのです。

他校と比べればまだ駆け出し (わざとそういう風に演じ分けてらっしゃるのも凄いと思います) にも見える椿咲花の熱心なさまやその歌詞を観劇して、他校のスクールアイドルたちが、「そうそう。自分たちにもこういう熱い夢があるんだよな。もっともっと頑張らないとな。この子たちを見て、勇気をもらったな…」と感じていたのではないかと。

多分…こうした思いが合体して出来た真の「ゆめの羅針盤」!周囲のスクールアイドルたちの夢をも輝き直させる、ハーバーランド一帯をときめかせるとびきりのナンバー。

 

往来のラブライブ!では必ずしも描かれてこなかった、熱い想いがあれば掛け値なしに誰でもスクールアイドルを始められるという側面、そしてその想いに感化されるオーディエンス。

そういう、特別ではないかもしれないけど掛け替えのない高校生の輝きのようなものを、満を持して受け取れたような気がしたのです…。

 

大サビ大団円で「ゆめの羅針盤」が再度歌われるのは、必然であったのかもしれませんね。両主演のお母さんに当たる二人の理事長の気持ちを想像しても重なる部分がある、大変美しい歌です。

 

 

さて今回、曲や場面としてもかなり絞り込み、もうひとりの主演である滝沢アンズ…セミプロ役として牽引する重唱の箇所が大変素晴らしいんです…のついてもほとんど言及できませんでした。

が、自分が一番胸を打たれたポイントについては手厚く記述することができたのではないかと思います。

 

 

それではここまでありがとうございました。

また、無限の地平線のどこかでお会いしましょう!